川口澄子さんは若いイラストレーターだけれど、和服は着こなすし、料理も詳しい。「デザインのたくらみ」という雑誌の連載が元になった本で川口さんにはお世話になった。その頃から日本への造詣は深かったけれど、このところの川口さんは旧暦と暮らしているかのようだ。
イラスト中心「川口澄子の仕事展 - 参 -」が開催中
「七十二候美味禮讚」
川口さんがイラストを担当した、というかそもそも川口さん自身が本のアイデアを出した「七十二候美味禮讚(びみらいさん)」が年末に出版された。川口さんが通っている和食の店「さだ吉」の料理を川口さんが絵にし、店の主人の三浦俊幸さんが文章を書いて季節を細かく紹介したものだ。
この本のイラストを中心にした展覧会「川口澄子の仕事展 - 参 -」が09年1月28日から福岡のギャラリー「望雲」で開かれている。旧暦の正月、というタイミングで日程を選んだのかもしれない。
七十二候とはまた細かい、と思う。二十四節気をさらに3つずつに分けた暦の季節。ここまで細かい季節の考え方があったとまたしても若い人に教えてもらったような気分だ。本にはやはり旧暦の元日(立春前後の新月の日)にあわせるため、最初の節気は立春。立春が2月4日からの「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」2月9日からの「黄鶯?睆(こうおうけんかんす)」2月14日からの「魚上氷(うおこおりをいずる)」と5日ずつ分かれる。二十四節気は太陽を中心にしたものなので、今の時代の暦にずれることなく組み込むことができる。
自然の移り変わりを感じられる「旧暦」
「旧暦ライフ 温故知新」
左が太陽暦、右が旧暦
川口さんも一気に七十二候に興味を持ったわけではなく、旧暦への関心が先にあった。以前、こちらは文章も絵も川口さんが担当した「旧暦ライフ 温故知新」。こちらは月の動きを中心にした太陰暦と、二十四節気の組合せでできた旧暦を彼女自身に暮らしに照らし合わせてできたもの。今もなお好評なので、毎年、月日の対応が変わってしまう旧暦の暦もまた別に作られている。付録というわけではないがカレンダー「新旧 暦くらべ」というもので、2009年が蛇腹折りの表裏半年ずつ。太陽暦と旧暦が対照できるようになったものだ。
今の時期を見てみよう。左半分が太陽暦、右半分が旧暦になっている。元旦の定義は「立春に一番近い新月の日」。今年は1月26日が新月なので、この日が旧暦の元日に当たる。そして立春を見ると右左そろっている。これは二十四節気だから同じ位置に来るわけだ。
太陽の動きにあわせるため、旧暦では閏日では間に合わず、閏月が19年に7回組み込まれる。今年は旧暦で見ると旧暦の5月と6月の間に入るんだそうだ。月の満ち欠けは確かにわかりやすい。それを見て何日かがおよそわかる仕組みだ。昔の人は自然を感じながら暦と暮らしていたに違いない。日本の伝統行事だけでなく、自然の移り変わりを感じるのに、旧暦はいい道具になる。
坂井直樹