「中国古典音楽鑑賞」
10月1日発売
CCD-98920(6枚組) 1万8000円
KING INTERNATIONAL
発売2か月が経つCDだが、面白いものを見つけた。
中国の古典、「史記」「三国演義」「西遊記」「水滸伝」「紅楼夢」「儒林外史」「嬌紅記」「金瓶梅」「聊斎志異」やら、近現代作家、例えば古竜の武侠小説などを読んでいると、どうしても何か物足りなくなってくる。それは、文章や書かれた内容に対する物足りなさではない。なぜか匂いと音がないことが物足りないのだ。ことに音という点では、文章を読んでいて想像しうる音は皆無だ。文章のリズムや流れとは別の、物語のバックグラウンドに流れているであろう音は、その時代の音でしかありえないだろうし、もしそれらの時代の音が本を読んでいる時に聞こえてきたら、これは読書も一気に進むだろう。想像の羽もいくらでも高く舞い上がることだろう。
それは日本の文学でも同じことが言えるのだろうし、欧米文学でも、その他諸外国の文学でも同じだろう。だが、中国文学は殊更にそうなのだ。なぜなら中国は「楽」を重んじてきた国であり、「楽経」は学問の頂点でもあった「五経」に準ずるものだった。「楽」の乱れは道徳や徳育の乱れの元とまで言った国だ。
だから、その時代背景から生まれた音が聴きたくなるのだ。例えば「三国志」の呉の将軍・周喩。音楽に精通し、演奏の僅かな間違いにも気付いた。人々は「曲に誤りあれば周郎が振り向く」と囃したという。また琴の名人とも言われた。その琴の音はどんなものだったのか?
決してすべての音が詰まっているわけではないが、「中国古典音楽鑑賞」には、「先秦・漢魏六朝」から「清」に至るまで、時代別に84曲もの中国古典音楽が収まっている。中でも、"曽侯乙編鐘(そうこういつへんしょう)"と呼ばれる、紀元前5世紀頃の墳墓から発見された、青銅製の64個もの鐘からなる打楽器の音は聴きモノ。時空を跳ぶ音だ。
全6枚組18000円が高いか安いか? それは聴いてのお楽しみ。たまには大人買いも良いかもしれない。
【中国古典音楽鑑賞 収録内容】
[DISC1]先秦・漢魏六朝~古楽の響き(紀元前770年~紀元580年) 全11曲 67分32秒
[DISC2]唐~霓裳羽衣(紀元618年~907年) 全15曲 56分41秒
[DISC3]宋~杏花天影(紀元960 年~紀元1279 年) 全20曲 64分24秒
[DISC4]元~潼関懐古(紀元1271年~紀元1368年) 全14曲 61分24秒
[DISC5]明~洞庭秋思(紀元1368年~紀元1644年) 全13曲 60分38秒
[DISC6]清~平沙落雁(紀元1644年~紀元1911年) 全11曲 66分19秒