マイクロソフトの次期パソコン向けOSに関する動きがにわかに慌ただしくなってきた。10月中旬には、これまで開発名だった「Windows 7」がそのまま正式名称に決定。リリースについても、当初は2010年と見られていたが、2009年後半説が有力となり、さらに早まって前半になるのではないかとの憶測まで出ている。
リリース前倒しはVistaの「見切り」を意味する
鳴り物入りで登場したWindows Vistaだが、評判は芳しくない
いずれにしろ、大幅な前倒しのリリースとなりそうで、ITニュースサイトなどでは、これはマイクロソフトがVitsaを失敗と認め、見切った証拠だと受け止められている。
いつも強気なマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏は、最近のカンファレンスでも「Vistaは(先代の)Windows XPよりも早いペースで導入が進んだ。Vistaは成功だ」と失敗説に力強く反論したが、後継OSを前倒しする理由は述べなかったようだ。調査会社のアンケート・統計はVista導入に消極的な傾向を示してるし、企業向けのPCや、最近のパソコン市場を牽引するEee PCなどのネットブック分野では、相変わらずXPが大手を振っていて、Vistaの影は薄い。
使い手のエクスペリエンスを蔑ろにしたAero
AeroスタイルはVista新機能の目玉のひとつだったが…
売れ行きは別にしても、Vistaの評判自体、そう芳しいと言えない。たとえばWindows 95以来の、ユーザーインターフェース第二次革命だと大いに喧伝された「Windows Aero」。ガラスのように綺麗な3DスタイルのおかげでWindowsの「景観」はよくなったに違いないが、その一方で最新PC上でも動作が緩慢に感じられ、むしろユーザーインターフェースを蔑ろにし、使い手のエクスペリエンスとパフォーマンスを損なったのではないだろうか。
セキュリティやエンタテイメント機能も、XPに(サードパーティ製で)追加すれば間に合うようなものばかりで、乗り換えを促進するような価値の創造に失敗した。そのうえ、先代のOS、Windows XPとの互換性も十分でない(場合がある)となれば、Vistaに厳しい目が向けられるのも当然だろう。
もっとも、こうした批判の多くはXPのリリース時にもついて回った。つまりは新しいモノへの保守反動的な感情に過ぎず、いずれ時が解決して、Vistaへの悪口は(XPのように)収まっていくだろうとの予測もあった。だが、「7」の登場がぐっと近づいたいまとなっては、Vistaに残された時間は少ないと思われる。XPとは違った形で終焉を迎えることになるかもしれない。
グーグルとクラウドの影がちらつくなかで
では「7」はどんなOSになるのか。バルマー氏は、Vistaとの互換性を持つが、マイナー・バージョンアップと呼ぶには手がかかりすぎているとし、「『7』はVistaだ。ただし、より良いVistaだ」などと雲をつかむような説明をする。
ネット上には、「7」が成功するにはすべてVistaと正反対のことをやればいい、と勧めるブログもあるが、まんざら笑い話でもない。開発筋の話では、Vistaでユーザーからの不満が多かった起動時間の短縮や動作の軽さを最重要課題として取り組んでいるという。
「7」は15秒ほどで起動するとの噂もある。ただ、スピードアップはVistaも含めて、Windowsがつねに取り組んできた永遠の課題でもある。どこまで改善できるのか、眉に唾しておくべきだろう。
パソコンの司令塔にして支配者として長年君臨してきたマイクロソフトも、ネット上ではグーグルに覇権を取られて苦戦中。しかも時代は「クラウド」(ほとんど「ネット」の言い換え語として使われている)が合い言葉で、マイクロソフト自身もクラウドベースのOSに乗り出すと発表したばかりである。
グーグルやクラウドの影がちらつくなかで、前作の挽回が求められる「7」。マイクロソフトOSの真価が問われることになりそうだ。
虎古田・純