10月30日から開かれる「100% design tokyo」で僕の友人のデザイナー、ロス・ミクブライドが腕時計を発表、発売するというので、その腕時計を見せてもらった。パッと見た瞬間、ロス、これ前に出したのより大きいだけじゃないの、と口に出しそうになった。しかしよくよく見ると細部がほとんど違うのだ。職人が手直しをするようにロスはデザインを磨き上げた。
「ブラッシュアップ」は物づくりの原点
ロス・ミクブライド本物の職人だ
自戒をこめて言うのだけれど、このところすぐに次のデザイン、その次のデザインと前へ進むことばかりを考えて、磨き上げる作業も時間もないデザイン作業が増えているのではないだろうか。同じモチーフを再び使うと、それはもう見た、と言われてしまう。よいところを汲み取り、ブラッシュアップして新しいものを生み出す可能性は極めて高いし、工芸品はそうして今日の形を手に入れたものだ。ついつい忘れてしまう物作りの原点だ。
「ノーマルタイムピーシーズ」はロスが2年前に立ち上げた時計のブランドだ。その代表と言えるデザインアイデアが、文字盤全体をふさぐ円盤に短針に当たる部分の長方形の窓を開け、この円盤が回転することで時間を表示するというもの。トリッキーでありながら、シンプルで美しい。同じアイデアで壁掛け時計も彼は作っている。
坂井直樹