「教師の道」を捨てて「芸人の道」へ
さむらい侍の伊藤靖さん(右)は「同期の仲間がたくさんできて良かった」と語る
スクールに通う生徒は20代半ばの社会人経験者も多いというが、大学を出てすぐにお笑い業界を目指す者もいる。人並み外れた"筋肉"を生かした笑いがウリのコンビ「テンゲン」の中島正晴さん(25)と上簗裕尚(かみやな・ひろたか)さん(22)もそうだ。
二人の共通点は、教員免許をもっていること。しかし教師の道ではなく、お笑いの道を選んだ。大学4年のとき、周りの友人たちが一般企業への内定を決めていくのをよそに、コメディスクールに通い始めたのだ。
「ここはひとクラスの人数が少なめで、ネタのダメ出しも個別でしっかりしてくれる。未経験者なので、親身になって教えてくれるところがいいと思った」
と上簗さん。中島さんは
「小学校ぐらいからお笑い芸人になりたいという夢があった。親にムリだと言われていたけど、たまたま雑誌でスクールの募集を見て、『いいタイミングなのかな』と思って入学することにしました。勢いですよ(笑)」
一方、テンゲンの二人とは違い、すでに芸人としての一歩を歩み出していたものの、もう一度「お笑いの基礎」を学び直すためにスクールに通う者もいる。テンポのいいボケとツッコミが持ち味の「さむらい侍」の二人、イトキンこと伊藤靖さん(25)と北岡祐樹さん(25)がそのパターンだ。
関西系の芸人養成学校を卒業してフリーでライブ活動をしていたが、ワタナベコメディスクールの関係者に声をかけられたのがきっかけで、スクールに通うことになった。
「毎週あるネタ見せでは、現役の放送作家さんや芸人の大先輩が見てくれる。感性が新しいし、『テレビだったら見せ方はこうしたほうがいい。ライブだったらこうしたらいい』と分けて教えてくれるのが良かった」
と伊藤さんは振り返る。
二人はもともと別のコンビで活動していたが、スクールに通い出す3ヶ月前に新たに「さむらい侍」を結成した。最初はコンビの方向性が決まっていなかったが、スクールの講師にアドバイスをもらうことで"壊れていく漫才"という彼らのカラーが固まっていったという。