出発点は「色のない世界」
21世紀の鹿威し。「水玉」だけが無言で動いている 〔(C)Mitsumasa Fujitsuka〕
地下に下ると、そこには去年の21_21 DESIGN SIGHT「WATER展」に出されていた作品など、グラフィックではない作品が置かれていた。撥水性の極めて高い素材を使った21世紀の鹿威し(ししおどし)。ぶつかっては細かくなる水玉が当たっては方向を変え、大きさを変え、やがては跳ね返ったり、一緒になって大きくなったりしながら白い坂道を転がっていく。最後の水玉が落ちたかと思うと、鹿威しが水の重さに負けて動き、次の水玉が溢れ出す。やはり白と銀の世界。さらに奥には黒と銀の世界もある。
徹底して色のない世界を展開し、何もない状況を考える。自分自身の提案は常にそこを出発点とする。しかし、デザインについて他の人が語るものであればヒントとして色を置く。商品の提案のためならば必要なだけの色を使う。原さんは常に相手のことを考えて物づくりをしている。その相手が自分になった瞬間に色彩は消えてしまうようだ。