産地偽装問題に続き、有害物質を含んだ米の流通も発覚するなど、「食」に対する関心が高まっている昨今、大ヒットしているのが「調理玩具」。お菓子や料理を簡単に作れる"オモチャ"に、子どもから大人まで夢中になっているというのだが…。
「のりまき」が作れる調理玩具がブームの火付け
カワイイ「のり巻き」も作れる「ふとまきまっきー」
調理玩具ブームの先駆けは2007年7月に女児をターゲットにバンダイが売り出した「のりまきまっきー」(同2940円)。「のり巻き」を簡単に作れることがうけ、発売1年で15万個を売り上げる大ヒットを記録した。さらに、08年8月には後継商品として、直径1cmの極細巻きから直径5cmの太巻きまで3種類の「のり巻き」を作れる「ふとまきまっきー」(同4410円)を発売するなど、「のりまき」シリーズは新展開を見せている。
玩具メーカー230社などが加盟する業界団体・日本玩具協会が08年6月にまとめた「2007年度 玩具市場規模調査」によると、2007年は調理玩具の売り上げ増が効き、女児向け玩具全体の売り上げは443億円を超えて前年比113.0%の伸びを記録。この勢いが、今年になっても衰えるどころかますます強まっているのだ。
ケーキやホイップクリーム、チョコレートまで
自分で作ったケーキでティータイムを楽しむのもおしゃれ
他メーカーでは、メガハウスが2008年9月1日から「ハッピーキッチン」シリーズの第4弾商品として「プチケーキビュッフェ」(同3990円)を発売している。市販のホットケーキミックスを混ぜた生地をカップに入れて2分ほどレンジでチンすれば簡単にプチケーキを作れるというもので、その出来栄えはなかなかのもの。
「ハッピーキッチン」シリーズは、07年秋から展開している女児を対象にした玩具シリーズで、08年8月末で第3弾商品までのシリーズ累計で18万個を販売。08年9月下旬には、ホイップクリームを作れる「ふんわりホイップクリーマー」や、オリジナルのチョコを作れるおもちゃの発売も決まっているという。
メガハウスで広報を担当しているマーケティングチームの板垣有記さんは、調理玩具が家族のコミュニケーションツールの1つになっているとしたうえで、調理玩具ヒットの理由について次のように話す。
「作る面白さはもちろん、実際に食べられ、みんなで楽しめるのが人気の理由だと思っています。後は、実際に食べ物がどうやって作られるかというところを学べるので、お子さんにとって食育につながるのも理由の1つだと思います。また、『食の安全』が見直されている昨今ですので、『自分で作った安全なものを食べたい』と神経質になっているお母さんがたくさんいらっしゃるかもしれないですね」
「少子化」でも調理玩具の将来は明るい?
本格的なそばを作れ、団塊の世代を中心に大ヒット
調理玩具のターゲットは子供に限らない。「玩具」と呼ぶことをためらうほど立派な、大人対象の本格的商品もある。
タカラトミーは07年10月、「大人の趣味」シリーズから、そばを自分で作れる「いえそば」(希望小売価格1万3125円)を販売しているが、50代~60代の団塊の世代を中心に好評を得ている。3万個以上を出荷しており、同社広報課の工藤芽生さんは「ターゲット層と年齢層から言うと、ヒット商品といえる」と語った。
大人向けだけでなく女児をターゲットにした同社の調理玩具シリーズも好調で、工藤さんは「ドーナツなども火を使わずにレンジで作れるので安全。お母さんと娘さんで楽しみながら作れる点も受けている要素」とみている。同社では08年10月以降にも、大きなプリンを作れる「ギガプリン」やクレープメーカー「くるりんクレープパーラー」を売り出す予定だという。
各社から商品が売り出され、後継商品の発売も次々に決まるなど、ブームを巻き起こしている調理玩具。玩具業界全体では「少子化」が深刻な問題になっているが、調理玩具ブームの今後はどうなのだろうか。日本玩具協会の稲増和夫さんが次のようにまとめてくれた。
「おもちゃメーカーは市場が狭まっているので、色んな方面にアンテナを張り、ブームを敏感にキャッチしての商品展開が重要になってきます。調理玩具ブームが定着するかどうかは分かりませんが、これからも注目されそうな分野であることは間違いないでしょうね」