「素材」を無駄にしない そこにブナコの価値がある
生産中止になったはまぐり型の小皿
ブナコの基本となる生成りの深鉢
ブナコの製品は工業製品と木工の中間に位置するような手工業だ。ブナの天然木を長さ2メートル、幅1センチ、厚さ1ミリの薄い板にする。底面にあたる部分を用意し、それを薄い板で巻いていく。巻き上げた後、この薄い板を手作業でずらして形を作る。こうしてできた形には段がある。ある時はそれをそのままに、ある時はそれを削って滑らかな面に、そしてその中間の少し段を感じるスタイルもある。最後にウレタン塗装をしてブナコの製品となる。
ブナコが今、再評価されたのにはまず、素材を無駄にしないという点がある。くり抜いて作る木工と比べると10倍の製品を同じ木材から生み出すことができる。エコ、と今なら簡単に言うけれど、ブナコが生まれたのは1960年代。工業化に対して手作業の木工がどうすれば個人の技を超えることができるかを考えた結果として生まれたものだ。ここは知っておいてほしい。
そして手触りで選ぶ喜びというのが重要なのではないかと僕も思う。選ぶ喜びがブナコにはある。実際、彼はそのショールームにあるすべての製品を手で触り、購入を決めた形の製品は店のバックヤードにあるものも含め、すべて触って確かめた上で選ばせてもらえたと言う。この体験ひとつで充分に楽しい夏休みになったようだ。
坂井直樹