「高齢化社会」は人間世界の話だけではない。日本ではすでに子供の数よりペット数が上回っており、犬の平均寿命(15歳)は20年前の約2倍、猫(16歳)も5割増しで長生きしている。ペットも高齢化時代を迎えているなか、当然のように高齢ペットを対象とした市場が拡大しつつあるのだ。
「ペットも家族の一員」
尻尾も出せる「おむつパンツ」(ヤマヒサ)
ヤマヒサのペットケア事業部は、2006年から老犬介護用品の販売を行い、いち早く高齢ペット用品に携わっている。展開するのは「歩行補助ハーネス」や「おむつパンツ」「床ずれ予防ベッド」などで、人間の介護用品とほとんど変わりない。
「ペットを家族の一員として考え、人間と同じように扱い、できる限り長生きしてほしいと願う飼い主様が増えてきている」
と広告宣伝課の櫛部さん。
ペットフード工業会ホームページによると、犬猫ともに10歳以上が30%近くにのぼっており、犬のみだと約半数が7歳以上であるという。
ペットの高齢化が進んだ要因としては、室内で飼育する世帯の増加、年齢や犬種に合ったペットフードの開発、獣医療の高度化などが考えられている。
「老老介護」という現実…
後ろ足用のハーネスでお散歩もラク(ヤマヒサ)
さらに特筆すべきは、定年退職を機にペットを飼い、そのペットも高齢という"老老介護"も増えている現状だ。
以前老犬を介護していたという高齢女性は言う。
「自分で立つことや食べること、排出もできなかったので、一日中そばにいて世話をしていた。介護はかなりハードで、精神的にも辛かった」
コーチョーの販売する「ワンニャンシニア用 紙おむつ」が、しっぽを穴に通すだけで簡単装着できることで人気のように、メーカー各社もこうした状況を察知し、軽量かつ機能的な介護用品の提供に力を入れている。
今後はサイズや素材面の充実も
「床ずれ予防ベッド」(ヤマヒサ)
「おむつ」が老犬用介護用品の中で一番高い人気を誇っている理由は、室外ではなく室内でペットを飼う人が増えているためで、突然の失禁に対応せざるを得ないからだ。
「歩行補助ハーネス」や「お散歩カート」の需要も伸びているが、これは、高齢になったペットにも、「たまには外の空気を吸わせてあげたい」という飼い主の親心が働いているためらしい。
前出のヤマヒサ・櫛部さんは、
「今後はサイズや素材(防水)などの面もさらに充実させ、ペットが快適に過ごせる介護用品の開発に努めていきたいと考えています。飼い主の方々と意見交換をしながら、互いにサポートしあえる関係になればいいですね」
と今後の展望を語っている。