映画館にはやっぱり「女」しかいなかった
苦しいときに助け合う「女の友情」が女性の共感を呼ぶ
木曜の夜8時台、六本木ヒルズにある映画館。できれば出入りがラクな通路側の席に座りたかったが、すべて埋まってしまっていた。真ん中より前のほうで、通路から一つ中に入った席が空いていたので、そこにした。
ビールとホットドッグ。ナイター観戦でもするようなつもりで座席に向かうと、すでに自分の両隣の席には女性が座っていた。右側は大きなサングラスをかけた20代と思われる女性。左側は友達と二人で見にきた30歳前後の女の人。足を組んでデンと座っている。
目の前の席も、後ろの席も、どこを見ても女、女、女。館内にはいろんな香水の香りが充満している。間違って通勤電車の女性専用車両に紛れ込んでしまったような気分だ。なかにはチラホラと男性の姿も見えるが、いずれもカップルで、男一人で来ているのは自分だけみたいだった。
明らかに場違いなところに来てしまった。そんな後悔の念が湧き上がる。肩身の狭い思いで縮こまりながら、
「ホットドッグを食べるときはできるだけ音を立てないようにしないと……」
と自分に言い聞かせたりした。