しばらく前からオニツカタイガーのホームページの動画が気になっていた。ネオンの輝く都会の中をカメラがドリーバックしていくとやがて、スニーカーの形をした街が現れ、オニツカを象徴するラインが高速道路になり、車が流れていく。
「エレクトリック・タイガーランド」を商品化
「Electric Light Shoe」。長さ1メートルの巨大なスニーカーのオブジェで、この世界を"エレクトリック・タイガー・ランド"と呼んでいる
この世界を「エレクトリック タイガーランド」とオニツカでは呼んでいる。これは映像だけでなく、長さ1メートルの巨大なスニーカー型のオブジェとして世界中の直営店を巡ってもいる。ワクワクした感じもあるし、日本の大都会らしい猥雑さもある。ところで、これをどうするつもりなの?......と実はずっと思っていた。
それが商品として登場した。企画テーマは「TOKYO NIGHT & DAY」。東京の1日をイメージしていると言う。あの動画から写し取ったような街の風景が細かく描かれている。そしてその一部に蓄光プリントと蛍光プリントが施されている。
このため、暗い所やブラックライトでネオンの街が浮かび上がるという仕組み。あの動画はコンセプトビジュアルで商品化を考えていたのだ。さらに1日を表現すべく、カラーバリエーションは白が昼、赤が夕、黒が夜と対応させたという。
本当にそんなに光るものなのか、と店を覗いてみたところ、確かにしっかりと光る。「ELE-BOX JAPAN TOUR」というイベントがまさに今開催されている。「Don't look」と書かれた窓がいくつもあって、この中にこの靴の世界が展示されている。8月31日までは渋谷のパルコ店、その後、全国を回るようなので、みなさんも覗いてみてはいかが?
東京の姿とそれを生んだ戦後のイメージが「靴」に結晶
"エレクトリック・タイガー・ランド"をテーマにしたグラフィックを施したモデルの黒(Electric Black/Black)
ネオンが浮かび上がった状態
今年になって、オニツカタイガーはまず「Made of JAPAN」という言葉でブランドの今年の方向性を見定めた。そもそも今のオニツカタイガー自体、アシックスが自らの原点を見直すことで新たな価値を見いだそうと始まったブランドだ。伝統柄を用いたり、さらには西陣織りをアッパーに使ったり、とオニツカタイガーを生んだ日本を見つめる作業へと自然につながる。
そして「エレクトリック タイガーランド」では現代日本に視線を向けてみた。東京の姿とそれを生んだ戦後のイメージがひとつになってこの靴に結晶した。こだわりはさらに深く、この靴のベースには1972年の札幌冬季オリンピック大会で日本選手団がトレーニングや入場に使ったデレゲーションシューズを採用しているという。こだわって、こだわって、これでもかとオニツカタイガーのDNAが注ぎ込まれている。
コンセプトから商品になる時に、コンセプトとはまったく違う要素が組み込まれていくことが多い。このコンセプトビジュアルと結果としての靴を見るとそこにまっすぐにつながるものを感じる。真剣に考え抜いたことが伝わってくる。
坂井直樹