投稿動画で「ピアノコンクール」 隠れた「街のショパン」を探せ

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   YouTubeなどの動画投稿サイトには、趣味としてピアノを楽しむ「街のピアニスト」の演奏動画が多数アップされている。なかにはプロ顔負けのテクニックをもったスゴ腕の演奏家もいる。そんな隠れた才能をネットを使って発掘しようというユニークな「ピアノコンクール」が2008年の夏から冬にかけて開催される。

誰でも気軽に「演奏」と「審査」に参加できるコンクール

動画サイトに投稿された「演奏動画」を視聴して審査する
動画サイトに投稿された「演奏動画」を視聴して審査する

   動画によるピアノコンクール「街のピアニスト・コンクール」は、ネット上に投稿された「演奏動画」を専門審査員と一般視聴者が一緒に評価して優勝者を決めるという今までにないピアノコンクールだ。

   応募者は、YouTube やYahoo!ビデオキャスト、eye Vioなどの動画サイトに演奏動画を掲載した後、コンクールのサイトでエントリーを行う。演奏形態や作品ジャンルは自由だ。プロ・アマも問わず、ピアノを演奏する人なら誰でも自由に自分の演奏を動画に記録して応募できる。

「一般のアマチュアのコンクールでは参加料がかかるのに対して、参加が無料である点も画期的です」

   コンクールを主催するファーストインパクト(FIRST IMPACT)の企画担当者・新井将之さんはこう話す。

   評価は、音楽関係の審査員だけでなく、一般視聴者が投稿するコメントの数と質で決まる。審査員にはプロのピアニストや調律師など、プロとしてピアノに関わる専門家を予定しているが、

「一般の方からピアノの好きなお子様を審査員としてお迎えすることも考えています。また視聴者の方のコメントが賞を左右するので、視聴者の方の意見が反映されやすいコンクールになっています」

   最も評価が高かったピアニストには「街のピアニスト大賞」として5万円の賞金が贈られる。演奏動画の受付は08年8月8日から11月30日までで、受賞者は09年1月に発表される。

ピアノコンクールの増加と動画投稿ブームが背景に

動画投稿サイトによる「ピアノコンクール」は日本初の試みだという
動画投稿サイトによる「ピアノコンクール」は日本初の試みだという
「開催のきっかけはピアノブームと動画ブームですね」

と、このユニークなピアノコンクールを企画した新井さんは語る。

   日本国内では10年ほど前から、大小様々なピアノコンクールが増えているという。また大人になってから趣味でピアノを始めた人や、趣味の域を超えた"プロ級"の実力の持ち主が、動画投稿サイトを使って自分のピアノ演奏を披露する風潮が広まっている。こうした流れを受けて、"ネット上のピアノコンクール"の開催を思い立った。

   「街のピアニスト・コンクール」に応募された動画は、コンクールのサイトで視聴できる。すでにサンプル動画として掲載されている中には女装した男性のものもあり、今後も個性豊かなピアニストが続々と応募してくることが期待される。

   また、サイトでは演奏者を都道府県別に検索することもでき、閲覧者は自分の身近にいる"街のショパン"を見つけることができる。演奏者のプロフィールも紹介されているので、奏者に対して親近感を持ちやすく、より楽しく視聴できるように工夫されている。

「好きな曲をリラックスして弾いてほしい」

   主催するファーストインパクトはインターネット関連事業を展開するベンチャー企業だが、ピアノ調律師を探せるサイト「ピアノ調律.net」やピアノ教室を紹介する「ピアノ教室.net」といった"ピアノ関連サイト"も運営。ネット上でピアノのプロと愛好家をマッチングするサービスを提供してきた。

   同社がピアノに関連するサービスを始めたきっかけは、各サイトの運営責任者でもある新井さんの経歴にある。

   新井さんは大学在学中にピアノの魅力に取り付かれ「音楽関係の仕事をしたい」と、周囲の反対を押し切り大学を中退、芸術大学に入学する。大学からピアノを始めた新井さんは周囲との実力の差を努力でカバーしなんとか卒業に漕ぎつけたが、夢であった音楽業界への就職は断念せざるをえなかった。

   それから十数年、趣味としてピアノを続けていたものの、"音楽を仕事にする夢"は諦めかけていた。しかし、ビジネスサークルでファーストインパクトの布川幹博社長と出会い、自分の夢を語ったところ、新井さんの音楽への情熱に押された布川社長は、その情熱を実現する形でピアノサイトを立ち上げるに至ったのだという。

   今回の「街のピアニスト・コンクール」も、ピアノ奏者と聴衆との"出会いの場"を提供することが目的だ。

「極度の緊張を伴う通常のコンクールでは見られないような、ご自分の部屋でご自分の好きな曲をリラックスして弾いている姿が見られるといいですね。すでにブログでコンテストに言及している方もいらっしゃって、関心の高さが窺われます。いまから反響が楽しみです」

と新井さんは期待をにじませる。ピアノ奏者と聴衆との架け橋になれるか、コンクールの行方が楽しみだ。

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