デビュー10年「椎名林檎」 音楽の概念を作り変えた女

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『私と放電』
椎名林檎/2008年7月2日発売
初回限定盤TOCT-26574~75 3800円
通常盤TOCT-26576~77 3600円
EMIミュージック・ジャパン


   椎名林檎をどう評するか、というのは大問題で、とりあえず「カッコいい」としておく。今年はデビュー10周年ということで、所属レコード会社のEMIミュージック・ジャパンはここで紹介する記念アルバム、DVD同時発売と椎名林檎祭りの様相。様々なメディアへの露出も頻繁で、改めて椎名林檎の魅力をファンとしては久しぶりに満喫しているところ。

   先に紹介しておくと『私と放電』は、デビュー時からのアルバム未収録曲やシングル・カップリング曲22曲を収録した嬉し楽しの名盤。シンディ・ローパーのカヴァー「アンコンディショナル・ラブ」やら「輪廻ハイライト」やら「時が暴走する」やら、「東京の女」、「シドと白昼夢」、「意識~戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱~」、「錯乱」まで22曲のどれもが、10年という時の流れも無関係に椎名林檎という器のはじき出す音としてここにある。

   なにより、椎名林檎のヴォーカルスタイルの多様さ、パンクでオルタナで、時にアヴァンギャルドな音作りの奇矯さは、戦後存在した音をすべて含みこみながら椎名林檎の世界の中で再構築されて垂れ流される。そのあざといまでの陰と陽、裏と表のコントラストは、世代を超える力を持っているし、1人の人間の内面をもズクズクにしてのける。こんな音を聴いて育った少女は、どれほど良い子に育つだろう!

   結局のところ椎名林檎は、いつの間にやらミュージシャンだの、アーティストだのという括りを飛び越えてしまっていて、椎名林檎としてそこにいる。10年そこらで、音楽の概念を作り変えてしまった感もある……。少し冷静にならなければいけない。

   普通に考えれば、椎名林檎は異能のミュージシャンなのだろうが、母親であり女であることをフっと思い出してしまう。この性も情も突き詰めた末に突き抜けてしまっているような椎名林檎は、それだけで鑑賞の価値がある。


【私と放電 収録曲】

disc1
1 すべりだい
2 アンコンディショナル・ラブ
3 リモートコントローラー
4 眩暈
5 輪廻ハイライト
6 あおぞら
7 時が暴走する
8 Σ
9 東京の女(※ルビ:ひと)
10 17
11 君ノ瞳ニ恋シテル

disc2
1 メロウ
2 不幸自慢
3 喪@CINコ瑠ヲュWァ
4 愛妻家の朝食
5 シドと白昼夢
6 意識~戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱~
7 迷彩~戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱~
8 la salle de bain
9 カリソメ乙女 (HITOKUCHIZAKA ver.)
10 錯乱 (ONKIO ver.)
11 映日紅の花

同時発売
シングル・クリップ集DVD
『私の発電』
初回限定盤:TOCT-26574-75/3800円
通常盤:TOCT-26576-77/3600円

*1998年デビュー・シングル「幸福論」から「この世の限り」まで、椎名林檎10年の軌跡を全シングルのミュージック・クリップで綴る贅沢な映像作品。さらに撮り下ろしの新作クリップ「メロウ」を初収録。また、音質も拘りの96kHz/24bitの高音質で全12曲収録

加藤普



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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