外回りの営業、早く終わったけどすぐ会社に戻りたくない。どこかでちょっと息抜きしていこうか――。そんな「サボリーマン」がひと休みして、リフレッシュできるスペースが街にはたくさん転がっている。
ネットカフェに対抗して始めた「お昼寝カプセルプラン」
眠るのも、映画を見るのもあなたの自由
東京・上野にあるカプセルホテル「ダンディ」は、2008年6月26日から"サボリーマン"のための「お昼寝カプセルプラン」を始めた。6時間で2100円。午前10時から午後4時まで、カプセル・サウナ・浴室の全てが利用できる。
また、映画やアニメ、ドラマなどがカプセル内で見放題というビデオ・オン・デマンドのシステムもついている。スーツからガウンに着替え、寝転んで映画やドラマを楽しむことができる。仕事のことなんか忘れてリラックスしたいサボリーマンにはありがたいプランだ。
今回のサボリーマン向け「お昼寝プラン」は、ネットカフェ対策なのだという。
「昨今のネットカフェ難民ブームなどで、元来カプセルホテルがターゲットとしていた層がネットカフェに流れてしまいました。お客を取り戻すために何かできないかということで企画したのが、このプランです」
とダンディの秋山恵一副店長は話す。
「昼間営業を行うカプセルホテル自体はこれまでにも存在しましたが、差別化をはかるために『サボリーマン』というキーワードを入れました。スーツからガウンに着替えることで、日ごろは働きづくめの方も『サボリーマン』に転身し、ゆったりとした解放感を味わってもらいたいと考えています」
今のところ、前日に飲みすぎて気分の悪いサラリーマンや、年金生活に入り時間に余裕のある老年層などに利用されているという。ただ、このカプセルホテルは男性専用。「お昼寝プラン」も男性しか利用できないという点がやや残念ではある。
「サボリーマン1枚!」で映画が安くなる
ビル街の谷間にあるベンチも、「サボリーマン」には重要な休息スポットだ
サボリーマンをターゲットとしたサービスはまだほかにもある。
渋谷の映画館「Q-AXシネマ」では、08年5~6月にケビン・コスナー主演の「Mr.ブルックス」を上映した際、「サボリーマン・キャンペーン」を行った。これは、平日の午後4時までの上映回にスーツ着用で来場した人を対象にしたキャンペーンで、チケットカウンターで「Mr.サボリーマン1枚!」と言えば200円割引きするというもの。
キャンペーンを企画した配給会社プレシディオの担当者は、
「雑談の中からなんとなく生まれた企画ですが、出してみたら通ってしまいました」
と笑う。こちらは男性だけでなく、女性もスーツ着用であれば割引可だった。
「約3週間のキャンペーン期間中、4人のサボリーマンの方がこのサービスを利用されました」
この数字、多いと見るべきか、少ないと見るべきか。「サボリ」をうしろめたく思わず、堂々とカミングアウトできるかどうかがポイントだったようだ。
サボリーマンのバイブル!「東京おさぼりマップ」
営業マン必携の「東京おさぼりマップ」。古書通販サイトなどで入手可能だ
仕事の合間の「おさぼり」は、ハードな現代社会を生き抜くための自己防衛手段である――そんな発想から2006年に出版されたのが「東京おさぼりマップ」(山海堂)だ。編集したのは、サラリーマン有志のサークル「東日本仕事と憩い研究会」とされている。
東京で働く外回りのビジネスマンが仕事途中に立ち寄れる「おさぼりスポット」を収録。大手町・新宿・飯田橋など、会社の集中する都心エリアを中心に約230件のリフレッシュスポットを掲載した。
おさぼりの定番スポット(?)であるマンガ喫茶や高級ホテルのロビーのほか、区役所や大学の食堂、安アパートやレンタルオフィスなど、目からウロコの「おさぼり場」も紹介されている。
それぞれの紹介記事には「静かさ」「イス」「快適性」などの項目ごとに5段階評価で星印がつけられており、求める条件に合わせてサボリーマンを休息の世界へといざなってくれることうけあいだ。
ただ、この「東京おさぼりマップ」は、現在ではもう新刊本の入手が難しい。出版社が07年12月に倒産してしまったためだ。会社がつぶれてしまっては、サボリーマンも存在できない。そんな警句なのだろうか?