ここにしかない正真正銘オリジナル
ミシンに向かう須田栄一さん。木綿の9号帆布、縫い糸はナイロン製。デザインによって布も糸もオリジナルの色に染める。
<ごきげんトート>に持ち手をつける。縫って折り返して、伸ばしたり叩いたり、ミシンと作業台を往復しながらの作業。
もとより平織の帆布は、ほつれやすい。そのためヌイシロは多めに1センチ取り、中巻きテープで養生する。底を二重にしたり、力が掛かる部分をカンヌキ縫いで補強したり、見えない細部にさまざまな工夫がある。そうして丈夫で長持ちする、美しく面白い、かっこいい帆布のバッグが仕上がる。
「日常使うものだから、シンプルで普通のバッグがいい。帆布が他の布と違うのは、汚れが風合いに変わること」
帆布も糸もオリジナルの染め色。ストーンウォッシュに見える帆布は、生地を傷めないバイオ加工だ。
長年愛用されて、ぼろぼろになったバッグが修理に戻って来ることがある。縫い目をほどいてパーツに分解し、傷んだ金具や布を取り替え、補強し、また元の針穴の通りに縫い上げる。
「うちのバッグが単なるモノで終わっていないということだから、嬉しいですよ」
いまでは人気の定番商品もあるが、型紙はほとんど残さない。人の真似をしないこと、常に変わり続けること。ここにしかない正真正銘オリジナルが、須田帆布の意地だと言う。
「住む。」編集部