定額制「独自」のサービスに期待する
さて、そんなATOKが「定額制」に踏み切った狙いはなんだろうか。Webベースの動画視聴や地図サービス、セキュリティソフトといった分野では月額制・年額制がある程度浸透しているが、日本語入力システムのような古典的ソフトでは珍しいケースだ。ジャストシステムでは他製品への定額制適用も検討しているという。
メーカーの説明では「初期導入コストを下げて、気軽に使い始めてもらえるようにした」とのこと。たしかに、愛想は悪いとはいえ無料で泊まれるMSホテルがあるのに、わざわざ余計なお金を出して別の旅館に泊まろうという人は多くない。
意地の悪い見方をすれば、そのままでは売りづらいから、細かく切り売りしはじめたのだと言えるかもしれない。月額制では月300円と安いが、2~3年経つと、ソフトを通常購入して使い続けるよりも割高になってくる。一方で、この定額制をビジネス紙(誌)的に見れば、古典的ソフトにネット時代の感覚を導入した改革的な動きと取れなくもない。
ユーザーがどちらの印象を持つかは、今後提供されるという定額制独自のサービスの充実度によっても、大きく違ってくるだろう。ソフト購入の選択肢が増えることは歓迎だが、「初期導入コスト」の話だけで終わるのではつまらない。新たな料金体系のもとに新たなサービスを育てて、ストレスフルな日本語入力をもっと向上させてほしいものだ。
虎古田・純