「無印らしさ」はどこにある? 「なるほど」と思わせる技と知恵

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   無印良品で中空耐熱グラスを見つけた。折角なので、ビールを注いだ写真をご覧いただきたい。350mlの缶ビールがここにちょうど入る。中空だから外に水滴が付かない。保冷もできる。これは便利だ。これで499円というのも頑張っている。ビールを注ぐととてもいい形も見えてくる。

「無印らしさ」を保たないと客は去ってしまう

中空グラスだから、ビールを注いでも外に水滴が付かない
中空グラスだから、ビールを注いでも外に水滴が付かない

   なるほど、とまず思った。それから、どうしてこの利点を即座に自分がわかったのかを考えた。携帯電話やパソコンが今ではいつもテーブルに載っていたりしている。日常的に水滴に気を使わざるをえない生活を僕たちはしている。そこで、こうしたグラスが登場した。

   実はこのグラスを僕のスタッフの1人が買って便利だと言っていたところで、見てみたいね、買ってきてよ、と言ったら、渋谷の無印良品では売り切れ、有楽町の店でようやく手に入れることができた。

   1年ほど前に良品計画の金井政明専務と対談する機会があった。その時、金井さんは「無印らしさ」をきちんと保たないとお客さんは去ってしまうという危機感を常に持っていると話されていた。

   このグラスのような「なるほど」と感じるものこそ無印らしさなのだろう。無印をミニマリズム(最小限主義)と誤解される危険は特に大きい。使い勝手を想起させる何かが加わっての「無印らしさ」を探していかねばならない。無印の商品開発はけっこう大変な作業だということがわかる。

坂井直樹




◆坂井 直樹 プロフィール

坂井直樹氏
ウォーターデザインスコープ代表/コンセプター。1947年京都市出身。京都市芸術大学デザイン科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立。ヒッピー達とTattooT-shirtを売り、大当たりする。帰国後、ウォータースタジオを設立し、日産「Be-1」「PAO」のヒット商品を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。2004年デザイン会社、ウォーターデザインスコープ社を設立し、ケイタイを初めとした数々のプロダクトを手がける。現在auの外部デザイン・ディレクター。07年9月、新メディアサイト「emo-TV」を立ち上げる。同年12月には、日常の出来事をきっかけにデザインの思想やビジネスコンセプトを書きつづった「デザインの深読み」(トランスワールドジャパン刊)を著した。

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