2008年6月4日、米アップルの携帯電話機「iPhone(アイフォーン)」の国内発売が発表された。キャリアはNTTドコモとの争奪戦に勝ったソフトバンクモバイルだが、今後ドコモから出る可能性はまだ否定できない。現時点では発売日、販売価格、料金体系などの詳細も不明だ。それでも、マスメディアには「衝撃」「黒船」などの冠つきで紹介される「iPhone」。さて、その実力のほどはどうだろうか。
本国発売から1年経ってようやく決定
iPhoneの現行モデルは価格約400ドルから。月額料金は60ドル~。
最新のデジタル機器に興味がなくても、「iPhone」という名前を今までに聞いたことがある人は結構いるはずだ。もしかしたら、これによく似た機器を国内の家電店で目にしているかもしれない。
本国アメリカでの発表は2007年1月で、今を去ること約1年半前の出来事。以来、国内メディアでも頻繁に取り上げられている。07年9月にはiPhoneとよく似た「iPod touch」が国内でも発売された。両者の主な違いは、乱暴に言って電話(とデータ通信)の有無である(touchでも無線LAN経由のネット接続は可能)。したがって、まだ見ぬiPhoneではあるが、そのアウトラインは日本のユーザーにもかなりお馴染みのはずである。
発売当時、そのデザインは新鮮に感じられた。従来のiPodは、クリックホイールと呼ばれる丸い操作部分が特徴だった。しかしiPhone/iPod touchでは、画面に触れて操作するマルチタッチスクリーン形式を採用。その結果、画面は大きくなり、凸凹のないスッキリとしたデザインになったのだ。
いつも通りのアップル「機能よりデザイン」
iPhoneと見分けづらいiPod touchだが、少し小振りで軽い。
機能面に注目すると、音楽動画再生プレーヤーたるiPodに電話とネット機能を加え、Googleマップが使えるなどアプリケーション面を充実させたのがiPhoneと言えるだろう。
ただし、メールやブラウジング、アプリケーションといった機能については、筆者はデザインほどの魅力は感じなかった。国内の携帯電話はこれらの点では充実しているし、iPhoneの画面が大きくても、PCサイトを閲覧するのに必要十分とは言えない。重さは135gと携帯電話機として重量級である。
機能よりもデザインなところで、いつも通りのアップルと思わされたが、それでもiPhoneはアップル初のスマートフォン(電話のほかにネット機能やPDA的要素を持つ)的製品であり、パイオニアの薫りが漂っていたのはたしかだ。少なくとも、実用性をそいだ上で薄べったく広げておいて、さも機動的、機能的であるかのように見せかけるノートパソコンよりは、はるかに好感が持てた。
一台ですべてをカバーできるという幻想
ソフトバンクモバイルが発売するのは、間もなく発表される通称「3G iPhone」と呼ばれる新機種と見られている。現行機はGSMという国内で使えない通信方式だったが、新型はその名の通り3G(第3世代携帯電話)方式を採用する。
その他の変更点として、薄型化や、バッテリーの強化、PDA機能の付加などがネット上のニュースサイトなどで噂に上っている。筆者の経験上こうした噂はかなり当たるし、iPodの進化過程から見ても順当なところだろう。つまり大きな変更はなさそうということだ。
それを前提とした場合、iPhoneは国内の携帯電話としては使いづらく、「ケータイ機器」をiPhone一台に集約するのには無理があるかもしれない。ワンセグやおサイフケータイ(FeliCa)、バーコード読み取りなど、日本では当たり前とも言える機能が、おそらく搭載されないのである。
またインターネットやアプリケーション部分についていえば、Eee PCをはじめとする低価格小型ノートパソコンが台頭してきている。これらは全面的でないにせよ、iPhoneのライバルになるだろう。
筆者にしてみると、現在のiPhoneが夜も眠れないほどインパクトのある巨大な蒸気船だとはなかなか思えない。少し前に売れていたハリウッドのイケメン俳優で、これから日本でも少しは人気が出るのかなあといった感じで見ている。
虎古田・純