「リバイバルではない。新しい小説として読まれている」
「格差社会」や「ワーキングプア」というキーワードと結び付けられて売れている『蟹工船』。だが、白樺文学館多喜二ライブラリーがマンガ版を企画したそもそもの狙いは、
「新しいメディアミックスの形で展開することで、『プロレタリア作家』としてではなく、純粋に『作家』としての多喜二に注目してもらいたい」
という点にあったという。
今回の『蟹工船』ブームを受け、「実はエリート銀行員だった」など、多喜二の知られざる側面にもスポットが当たりつつある。多喜二ライブラリーの佐藤さんも興奮せざるをえない。
「1929年に『蟹工船』が発売されたときも刷ったのは半年で3万5千部程度でした。しかし、今回の『蟹工船』ブームは半年で10万部以上。これは小林多喜二虐殺に匹敵する文学的事件です。
多喜二が天皇制を批判したときも、今回のように新聞各紙が注目することもありませんでした。これはもはやリバイバルではありません。『蟹工船』は今生まれた、新しい小説として読まれているのです」