プロレタリア文学を代表する小林多喜二の『蟹工船』が今、売れている。「多喜二虐殺に匹敵する文学的事件」との声もある空前のブームを受け、小説だけでなくマンガにも注目が集まっている。
30~50代が「格差社会」との絡みで買っていく
書店で平積みにされる『蟹工船』。古典とは思えぬ売れ行きだ
『蟹工船』は、1929年に発表された小林多喜二の小説。カムチャッカ沖で蟹を採り缶詰にまで加工する「蟹工船」を舞台に、過酷な状況下で労働者が非人間的な扱いを受ける様子を描いている。
80年も前に書かれたこの小説が今、ブームになっている。新潮社は、毎年およそ5千部刷っている文庫『蟹工船・党生活者』を、2008年は5月の時点で10万7千部増刷することに決定した。
三省堂書店神保町本店では、「ワーキングプア」と関連させて2月から特設スタンドを設けた。これまで300冊近く売れたという。丸善丸の内本店でも4月から特設スタンドを設置。こちらも300冊近く売れた。
新潮文庫編集部の担当者によると、買っていくのは「30代から50代の働きざかりの人が多い」という。
「30代の方は今、自分たちが置かれている格差社会との比較で、40代、50代の方は、『多喜二ってそういえばあったな』というのと、『今話題になっている格差社会ってどういうものなんだろう』という気持ちで読んでくれているようです」