225万7500円。これだけのお金で車を買おうと思えば、カローラやブルーバードシルフィが新車で買えるし、中古でよければBMWやベンツにも十分に手が届く。しかし、アウディジャパンがこの価格で売り出したのは子供向けの玩具である「ペダルカー」だというから驚きだ。
70年前のレーシングカーを「1/2スケール」で再現
約230万という驚きの値段は、もはや玩具として扱うことすら失礼に思えてくる
ペダルカーとは、デパートの玩具売り場でもよく見かける"クルマのおもちゃ"のことだ。子供がシートに座り、足でペダルをこぎ、ハンドルで舵を取りながら進む小さな車。普通は子供が遊ぶオモチャにすぎないが、アウディのペダルカーの価格はとても玩具の枠には収まりそうもない。
アウディジャパンが2008年5月12日に発売したのはレーシングカー「アウトウニオン タイプC」のペダルカーだ。「アウトウニオン タイプC」は1936年~37年に、アウディの前身であるアウトウニオンによって生産されたレース専用の自動車。同車を1/2スケールでペダルカーとして再現した。そのサイズは、全長2200mm×全幅990mm×全高624mmというものだ。
搭乗可能身長135cm以下という小さなボディにもかかわらず、本格的なレーシングカーと同様にアルミ製のパイプを用いたフレーム構造を採用している。ペダルを漕ぐとチェーンを介して車輪が駆動し、シフトレバーにより7段の変速機を操作することもできる。ペダルを逆回転させるとブレーキがかかる仕組みだが、ブレーキレバーを引くと油圧制御のディスクブレーキによる制動ができるなどディティールを追求している。
オーク材で作られたダッシュボードや鋳造アルミリムを用いたホイールなど、徹底的に"本物"にこだわった。購入すると、オーナーズマニュアルやシリアルナンバー入りの証明書など、まるで本物の車を購入したかのような周辺グッズもついてくる。
アウディジャパンの広報部はJ-CASTモノウォッチの取材に対し、
「玩具という枠に収まらない、コレクターズアイテムとしての商品」
と説明した。たしかにこの製品に「玩具」という肩書きだけでは明らかに役不足だろう。
注目される「コレクターズアイテム」としてのペダルカー
ペダルカーの相場は平均して3~4万。ベンツでさえもお手ごろな価格で購入が可能だ
玩具としてではなく、コレクターズアイテムとしてのペダルカーが登場すること自体は、不思議なことではない。というのも、最近ではペダルカーが子供向け玩具としてだけではなくコレクターズアイテムとしても注目され、その需要が高まっている背景があるからだ。
ペダルカー・電動カーの通信販売専門店「キッズカーネット」によると、孫や子供へのプレゼントなど子供の玩具として購入する客のほかに、店舗や一般家庭のインテリアとして購入する客も増えてきているという。
「分かる範囲では、当社の場合、玩具目的とそれ以外の目的の比率は6:4ぐらいとなっています」
購入する際にも
「子供が成長したあとインテリアとするならどれがいいだろうか?」
「玩具っぽくない製品はどれか」
といった質問が少なくなく、インテリアとする前提で製品を探す人は非常に多いという。
「今までにそんな製品はありませんね」
そんなペダルカーの相場は、平均して3~4万円、高くてもせいぜい7~8万円。メルセデスベンツ300SLやエンツォフェラーリといった高級車をモデルにしていても、実車の100分の1ほどの値段だ。アウディのペダルカーとはケタが全然違う。
「230万円近いペダルカーを今までに見たことがありますか」
キッズカーネットの担当者に尋ねたところ、
「私の知る限りでは今までにそんな製品はありませんね」
との答えが返ってきた。たしかにコレクターズアイテムとなりつつあるとはいっても、アウディのペダルカーは別格といえるようだ。
アウディのペダルカーは全世界で999台の限定販売。08年5月の時点では20~30台が既に売れているという。各国ごとに割り当てられた数というのはないとのことなので、その気があれば早い者勝ちで誰でも購入可能だ。
購入はできないけど見てみたい…という人は、アウディのブランドショールーム「Audi Forum Tokyo」(東京・表参道)に実物が展示されているので、足を運んでみてはいかがだろうか。