今の日本人に響く「使い捨ての皿」~WASARAという提案

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文化の根源には必ず「食」がある

「WASARA」の素材は、さとうきびの搾りかすと葦
「WASARA」の素材は、さとうきびの搾りかすと葦

   まず、「日本の美意識や価値観」を持ち込んだ提案である、ということ。これは様々な企業の商品開発の現場でテーマとして言われるのだが、なかなか現実の商品に落とし込めない。緒方さんはこのテーマをきちんと細分化し、どの要素をとっても根底に日本の美意識や価値観から選んだものにし、それを統合してカタチにしている。

   そして、使い方だ。日本人は昔から器を手に持つ。だからWASARAは、和食器から発想し直した、使い捨てのカタチだ。個性的だと感じるのは僕たちがこの器をパーティー会場で見る紙皿と比べてしまうからだ。和食器の並ぶ棚にこの器があっても違和感はまったくない。

   素材はさとうきびの搾りかすと葦。木材ではなく、朽ちるだけの素材だ。資源の有効活用というだけでなく、土に還る素材でもある。ただの使い捨てではない。まさにエコだ。パーティー会場でのお決まりの紙皿とこのWASARAではまったく印象が違うのも明らかだ。この器にはもてなしの心が表れている。使い捨ての紙容器がもてなしの心を伝える器となる。

   インテリアから始まり、食を手がけるようになったのは、文化の根源には必ず「食」があるからだ、と緒方さんはよく言う。そして食を提供する場、食そのもの、さらに包装の工夫と広がってきて、今回のWASARAだ。いろんなことを手がけているようで、その奥にひとつの芯がきちんと通っている。

坂井直樹




◆坂井 直樹 プロフィール

坂井直樹氏
ウォーターデザインスコープ代表/コンセプター。1947年京都市出身。京都市芸術大学デザイン科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立。ヒッピー達とTattooT-shirtを売り、大当たりする。帰国後、ウォータースタジオを設立し、日産「Be-1」「PAO」のヒット商品を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。2004年デザイン会社、ウォーターデザインスコープ社を設立し、ケイタイを初めとした数々のプロダクトを手がける。現在auの外部デザイン・ディレクター。07年9月、新メディアサイト「emo-TV」を立ち上げる。同年12月には、日常の出来事をきっかけにデザインの思想やビジネスコンセプトを書きつづった「デザインの深読み」(トランスワールドジャパン刊)を著した。

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