文化の根源には必ず「食」がある
「WASARA」の素材は、さとうきびの搾りかすと葦
まず、「日本の美意識や価値観」を持ち込んだ提案である、ということ。これは様々な企業の商品開発の現場でテーマとして言われるのだが、なかなか現実の商品に落とし込めない。緒方さんはこのテーマをきちんと細分化し、どの要素をとっても根底に日本の美意識や価値観から選んだものにし、それを統合してカタチにしている。
そして、使い方だ。日本人は昔から器を手に持つ。だからWASARAは、和食器から発想し直した、使い捨てのカタチだ。個性的だと感じるのは僕たちがこの器をパーティー会場で見る紙皿と比べてしまうからだ。和食器の並ぶ棚にこの器があっても違和感はまったくない。
素材はさとうきびの搾りかすと葦。木材ではなく、朽ちるだけの素材だ。資源の有効活用というだけでなく、土に還る素材でもある。ただの使い捨てではない。まさにエコだ。パーティー会場でのお決まりの紙皿とこのWASARAではまったく印象が違うのも明らかだ。この器にはもてなしの心が表れている。使い捨ての紙容器がもてなしの心を伝える器となる。
インテリアから始まり、食を手がけるようになったのは、文化の根源には必ず「食」があるからだ、と緒方さんはよく言う。そして食を提供する場、食そのもの、さらに包装の工夫と広がってきて、今回のWASARAだ。いろんなことを手がけているようで、その奥にひとつの芯がきちんと通っている。
坂井直樹