ユナイテッドアローズを率いる重松理さんもよく知っているし、京都の帯屋、誉田屋(こんだや)の山口源兵衛さんもよく知っている。しかし、この2人がこんな企みを進めていたとは知らなかった。手を組んで和装を作っていたのだ。
かつてこんな服を着た男がいたのだ
コラム筆者も「和装」のモデルになった
源兵衛さんのお誘いで、僕も和装のモデルの1人になった。ショーのタイトルは「傾奇者達之系譜(かぶきものたちのけいふ)」。奢侈禁止令が発布される以前、桃山から江戸の初め、懐にとても余裕のある男たちが着飾ることを楽しんでいた時代の衣装を再現したものだという。
この写真はそのショーでの僕だけれど、こんなのが街を歩いていたら、ちょっと避ける。これが自分なのかな、と驚いている始末。服装にはそれだけの力があるし、和装にその力があることがこうしてはっきりとわかる。全身ジャン=ポール・ゴルチエでそろえても、銀座ですれ違った時、この和装ほどの力はないだろう。
ちなみにこの着物は泥染めとろうけつ染めで作られたもので、渋好みで貫かれている。派手というのではないのだ。かつてこんな服を着た男が実際にいたのだ。渋好みがこれほどに強い。実に大胆不敵。
このファッションショーはユナイテッドアローズによるもので、今後、和装に積極的に取り組んでいくという意思表示だ。ファッションショーからそう間を置かず、ショーのコレクションの一部を先週末、原宿の店で展示即売した。
ショーで見せるだけではなく、実際に販売する。まさに和装への姿勢を見せたと言える。展示の様子を見ても、いわゆる和装というイメージではない。フローリングにソファやバイク。現代の男たちへ、という提案になっている。
坂井直樹