言葉遊びの伝道師「KREVA」 その源流は「万葉集」にあり?

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『クレバのベスト盤』
KREVA/2008年3月19日発売
PCCA-04909/3150円
ポニーキャニオン


   言葉遊びというのは、これまでは文芸というカテゴリーの中に縮こまっていた。それも一部の好事家の間に知的遊びというニュアンスで広まっていた程度だ。

   さまざまな言葉遊びの中でも、高度なもののひとつに「回文」がある。「しんぶんし」というやつだ。今でも忘れられない回文の名作がある。70年代に日本を代表するコピーライターとして活躍した土屋耕一氏の作った「軽い機敏な子猫何匹いるか」というもの。同じ時期に、作曲家の中村八大氏が、音符版の「回文」を作ったりしていた記憶がある。

   韻を踏んだり、ダブルミーニングの言葉を使ったりするのも言葉遊びだが、この最も古い形は万葉集に存在するという人もいる。万葉の時代はまだ大陸からの帰化人や南洋島部から流入した民族がそれぞれの言語を継続的に記憶し、「日本」という共同体の共通言語としての日本語が未統一だったともいわれる時代で、万葉集歌にはそれらの言語で解読すると、ひとつの、例えば赤色とだけいっている歌があったりするという。

   それ以降の和歌や連歌をみても、ことにダブルミーニングを多用する歌が多いのも確かだ。日本人は元々言葉遊びが好きな民族なのだろう。

   そして現代。現代の言葉遊びは日本語力の衰退という側面もあるのだろうが、若者、ことに女子高生の間に短縮語のような形で流布し日常生活に溶け込んでいる。「KY」が代表的なものだが、正直縮めすぎで分からない。

   そんな中で、言葉遊びと明確に捉えられるのが、HIP HOPのMCが繰りだす言葉だ。これはHIP HOP誕生の地・アメリカのMCたちが、韻を踏む言葉の構成でリズムを生み出していたことから日本のMCも影響を受けたと考えるのが一般的だが、実は日本人は元々そういう遊びが好きなのだと考えると、今の時代を別の目で見ることもできそうだ。

   その言葉遊びの第一人者がHIP HOP MCとして縦横無尽に活動する、KREVA。とにかくKREVAのMCとしての切れのよさは、言葉を操るうまさに他ならない。HIP HOP界の頂点を決めるイベント「B-BOY PARK」のMCバトル(フリースタイルMCを披露する)で3連覇、殿堂入りした実力は伊達ではない。

   時間があったら、彼の出している作品のタイトルだけでも眺めて見ると良い。そこには多くの言葉の遊びがちりばめられている。もちろん彼の生み出す言葉の乗ったトラックも心地よく、このベスト盤は、言葉遊びの伝道師・KREVA入門として超オススメ!


【クレバのベスト盤  収録曲】

1.ストロングスタイル
2.ビコーズ
3.くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ[Single Edit]
4.アグレッシ部
5.THE SHOW
6.Have a nice day!
7.H.A.P.P.Y
8.It's for you
9.国民的行事
10.スタート
11.イッサイガッサイ
12.ファンキーグラマラス feat. Mummy-D from Rhymester/マボロシ
13.ひとりじゃないのよ feat.SONOMI [Single Version]
14.音色
15.希望の炎
16.あかさたなはまやらわをん[Bonus Track]

加藤普



くればいいのにfeat.草野マサムネ from SPITZ



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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