「コクトーのラベル」にまつわる粋なエピソード
会場にはコクトーの親友が描いた「原画」も
もうひとつ僕が興味を持ったのが、僕が生まれた年でもある1947年のジャン・コクトー。こちらはエピソードが気に入った。
コクトーからオリジナルを預かっていたフィリピーヌ男爵夫人はオリジナルを紛失してしまった。困った男爵夫人はコクトーの親友の画家、ジャン・マレーに複製を作ってくれと頼んだ。つまりラベル作成のために存在した複製を元に手描きの複製を作った訳だ。堂々とコクトーそっくりのサインも入れて。
複製とオリジナルを巡る不思議な出来事がこの会場では渦巻いている。そして豊かさを堂々と示すように、会場中央にはこのヴィンテージ・ワインのボトルが塔を作っている。ワインラベルはやはりボトルに貼られて一層深みを増す。何よりもこの中にはボルドーを代表するワインが秘められているのだから。
坂井直樹