ワインとアートの素敵な関係 ウォーホルが描いた「ワインラベル」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

ワインラベルは「ウォーホル的表現」に適していた

展覧会のテープカットをするフィリピーヌ・ドゥ・ロスシルド男爵夫人
展覧会のテープカットをするフィリピーヌ・ドゥ・ロスシルド男爵夫人

   僕が一番驚いたのは1975年、アンディ・ウォーホルの作品だ。前オーナーであるフィリップ・ドゥ・ロスシルド男爵のポートレートをコピーし、アニメーションのセル画に使われるのと同じ透明シートにデッサンのように描き移し、コピーとセルの間に破いた色紙を挟み込む。

   ここにあるのはウォーホルの最終作品として僕たちがいつも目にしているシルクスクリーンではない。ニューヨークの彼の工房「ファクトリー」の内部で行われていた、検討中の作品の姿だ。セルを固定するのに使われた糊の変色が時代を実感させてくれる。片隅に仕上がったラベルが貼られ、「なるほど、こうまとめたのか」と納得する。

   そして時代を感じる。70年代、工業製品の力が芸術の中に浸透してきた。ウォーホルはまさにその中心にいた。

   興味深いのは「ワインラベルに芸術の複製を使う」というアイデアに、まさに「アートを複製にすること」を持ち込んだウォーホルの作品がちゃんとあるという点だ。ワインラベルというのはとてもウォーホル的な表現の場なのだと改めて納得。

   かつて樽で販売していたワインをシャトーで瓶詰めしてラベルを貼る、という販売方法を開始したのが、他ならぬフィリップ男爵であったと言う。ラベルのデザインには当初からポスターデザイナーが起用されていた。ならばヴィンテージ・ワインには芸術を、と男爵本人は自然な発想で行き着いていたのかもしれない。

坂井直樹




◆坂井 直樹 プロフィール

坂井直樹氏
ウォーターデザインスコープ代表/コンセプター。1947年京都市出身。京都市芸術大学デザイン科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立。ヒッピー達とTattooT-shirtを売り、大当たりする。帰国後、ウォータースタジオを設立し、日産「Be-1」「PAO」のヒット商品を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。2004年デザイン会社、ウォーターデザインスコープ社を設立し、ケイタイを初めとした数々のプロダクトを手がける。現在auの外部デザイン・ディレクター。07年9月、新メディアサイト「emo-TV」を立ち上げる。同年12月には、日常の出来事をきっかけにデザインの思想やビジネスコンセプトを書きつづった「デザインの深読み」(トランスワールドジャパン刊)を著した。

>>>emoTV ムービーのココロミ


姉妹サイト