若者のクルマ離れは本当か?
「若」対「壮」激論!クルマ談義(1)

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   かつては若者の憧れでありステイタスであった「自動車」の人気凋落が言われて久しい。そんな状況を憂うJ-CASTモノウォッチのデスクと編集部員が「クルマの未来」について熱く語る「激論!クルマ談義」。第1回は「若者のクルマ離れ」をテーマに取り上げる。コメント大歓迎。あなたも激論に参加しませんか。

「車に興味を持っている若者は一部にすぎない」

モノウォッチ編集部の「壮」と「若」が「クルマの未来」について熱く議論した
モノウォッチ編集部の「壮」と「若」が「クルマの未来」について熱く議論した

☆壮   クルマが国内で売れなくなった。先日のJ-CASTニュースでも取り上げたけれど、4年連続で自動車の新車販売台数が減少した。この数字はピーク時の1990年に比べて3割も少ないという。日本の経済にとっても大きな問題だろう。そこで第1回はクルマ離れの真相に迫りたい。なかでも、若者がクルマを欲しがらなくなったというんだけど、それはほんとうなの?

★若   この前、あるリサーチ会社が発表した20代対象の調査結果だと、若者が欲しいモノのランキングで、自動車は20項目のうち16位なんです。旅行や洋服、家電製品、携帯電話などが上位で、クルマはビリに近い。

☆壮   僕ら60歳前後の世代にとって、クルマは若いころから憧れの的だった。自由を与えてくれる翼のようなものであり、所有すること自体がステイタスだったし、女の子にモテるための最強のツールでもあった。今の若者にとってクルマは何なんだろう。

★若   自分の周りにはクルマを自分で所有している学生がいないし、クルマが欲しいかと聞けば、「そうでもない」という答えが圧倒的ですね。あれば便利と考える若者は多いでしょうが、車に熱中する人間や、車に興味を持っている若者は一部にすぎないと断言できます。

☆壮   それは大都市の学生に限った現象じゃないの? 都市部では駐車場が少ないとか鉄道網が発達しているなどの事情があるけど、地方は必ずしもそうではない。都市部以外では、今も若者にとってクルマは必需品だと思うよ。

★若   僕もそう思います。地方と都市部を合わせてクルマの需要を平均化したら、極端に低下しているはずはないですよね。ただ、「若者」という言葉でイメージされるのは都市部の学生やサラリーマンでしょう。マスコミに取り上げられるのも都市部の若者の声ばかりです。だから、都市部の若者の傾向がムーブメントを起こしやすいのも事実ですよ。

「クルマ漫画やレーシングゲームで満足してしまう」

運転の喜びを追求したスポーツカー「ロータス・ヨーロッパ 225」
運転の喜びを追求したスポーツカー「ロータス・ヨーロッパ 225」

☆壮   それも一理あるね。じゃあ都市部で若者のクルマ離れが進むのはなぜなの? コストが高くつくってことか?

★若   駐車場代がバカ高いし、税金、保険、ガソリン代などの維持費を考えると、手を出しにくいのは事実ですね。それに、クルマの必要性も薄れました。スキーに行きたければ深夜バスがあるし、旅行に行くなら電車もありますから。

☆壮   でも、公共輸送機関と違って、クルマは自分たちだけの空間だから濃密な人間関係が可能だし、行く先も思いのままだよ。

★若   昔はクルマという密室空間をともにすることに大きな意味があったと思うんです。でも、今は携帯電話でいつでも会話できるし、mixiなどのSNSで仲間と情報も共有できます。クルマは必需品とは言えなくなっていますね。

☆壮   それって、会話であっても、面と向かってする"対話"ではないよね。情報の共有ではあっても"体験"ではないよね。ヴァーチャルな代替行為にすぎないじゃないか。

★若   それは言えます。実はクルマの運転にしても同じことで、『頭文字D』や『湾岸ミッドナイト』といったクルマ漫画を読んだり、プレステの『グランツーリスモ』のようなゲームをしたりすることで、満足しちゃう部分があるかもしれません。

☆壮   漫画やゲームでクルマや運転の面白さを知ったら、次はホンモノのクルマを運転したくなるのが道理ではないの? なぜ疑似体験で満足してしまうんだろう。

★若   僕の場合は、免許を取って実際にクルマを運転したら、とてもゲームでは満足できなくなって、今はほとんどやってませんけどね。

☆壮   それが健全だし、当たり前だと思うけどなあ。

★若   ただ、最近は運転免許を取る目的も変わりつつあります。就職活動でエントリーシートの「資格」欄に書くためとか、身分証明に便利だから、という若者が増えている。必ずしも運転するために取るわけではないんです。

「技術進歩のおかげで、運転の喜びや楽しさが奪われた」

女性を意識してデザインされた日産「モコ」
女性を意識してデザインされた日産「モコ」

☆壮   うーむ。だとすると、昔の「セリカ」とか「シルビア」みたいな若者向けのデートカーを売り出しても、若者は振り向かないのかな。きっと、昔憧れたおじさんたちがメインの購入層になっちゃうんだろうな。「スカイライン」や「ロードスター」もおじさんの購入が多いそうだし。

★若   その点に関して思い出すのが、元F1ドライバーのアラン・プロストが言った言葉です。彼は「今のF1は誰でも勝てる」と言ったそうですが、技術が進んでクルマがさまざまな運転技術をサポートするようになった結果、運転の喜びというものが奪われたという批判が、この言葉には含まれているような気がします。クルマというものはちょっと前まで、素早いシフトチェンジ、車庫入れ、というような“スキル”を高めないと乗りこなせないものでしたよね。

☆壮   そうそう。“スキル”を磨いて上達すると、優越感や満足感にひたることができた。だからいっそう運転技術を磨こうと思ったし、裏道を覚えようとした。

★若   いまや「フェラーリ」でさえもAT限定免許で運転自体はできるんです。シフトはオートマティック全盛で、車庫入れもパノラマビューという装置で簡単にできる。裏道を覚えなくてもカーナビがあれば済みます。

☆壮   技術進歩のおかげで、クルマは安全で易しい乗り物になったけれど、同時に運転の喜びや楽しさも奪われたと言えるだろうね。じゃあ、どうすれば運転の喜びを取り戻せるのだろう。「シトロエン2CV」みたいな原点に帰ればいいのかな。

★若   それは難しいでしょう。だって、今やクルマの主力ユーザーは女性なんです。コンセプトの段階で女性だけを向いているような車が増えています。クルマは今後もどんどん易しい乗り物になっていくでしょう。

☆壮   買い物とか子供・夫の送り迎えとか、日常的にクルマを運転するのは奥さんのほうが多いだろうね。購入の際も奥さんの意見が重みを持つだろう。そういえば、女性向けのインテリアを売りにするクルマが、たしかに増えたな。

★若   でも、女性から叱られることを覚悟で言うと、女性にとって、クルマはあくまでも便利な道具であって、クルマが大好きとか熱中しているわけではないと思うんです。一方、男性のほうは、クルマに憧れを感じたり、夢を求めたり、ある種の思い入れを持つ人が少なからずいます。
   こういう車好きの購買層がスポイルされているともいえますね。そうした男性は一部かもしれないけれど、ある意味では有力な支持者のはずなんですよ。その層に向けて、値段が安めで、運転する楽しみを追求した車を作れば、クルマに対する若者の意識も変わるかもしれません。

☆壮   言い換えれば“スキル”を必要とするクルマだね。

★若   乗りこなすことがカッコいいという意識も生まれてくると思います。

☆壮   その点、ヨーロッパではトランスミッションがMT中心で、クーペやセダンが充実していることからもわかるように、車を運転する楽しみを考えている。こうした日本とヨーロッパのクルマに対する考え方の違いは、環境対策とか安全対策にも表れているんじゃないだろうか。2回目は、そこをテーマに議論しよう。

   ※日欧の「環境技術」どっちが上? 「若」対「壮」激論!クルマ談義(2)
   ※「未来のクルマ」を定義しよう 「若」対「壮」激論!クルマ談義(3)

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