金網細工は、京都の隠れた伝統工芸だといわれる。下京区寺町通りに店を構える鳥井金網工芸の創業は明治22年。四代目の鳥井幹司さんがつくる金網細工は繊細な美しさがあり、しかも頑丈だ。
大事に長く使うほど「色艶」が深まる
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柔らかな銅線をよじり、ひと目ずつ丁寧に編み上げる茶こし。底には菊の花模様、側面は亀甲に編み上げる。
人気の定番商品は、茶こしと豆腐すくい。他にも、笊(ざる)や焼き網など、台所で活躍するさまざまな日用の道具が店内に並ぶ。
軟らかな銅線やステンレス線を、折り曲げたり捩(よじ)ったりして編み上げる。銅の焼き網は全体に熱が回るので、魚や餅が綺麗に焼き上がるという。
また銅は、経年変化で飴色に変わるのが持ち味だ。大事に長く使うほど色艶が深まる。とくに茶こしは、お茶のタンニン成分で自然に黒くなるのが楽しみでもあるのだが、好みもあるので気になるという客にはステンレス製をすすめているそうだ。
ときには、手持ちの急須に茶こしをあつらえてほしい、という注文もある。サイズばかりでなく、編み目の細かさなど、どんな注文にも応えることができるのは手網みならでは。捩った銅線をほどけば、中網や枠を取り替えて修理することができる。
「住む。」編集部