「ベンチャー企業を数ヶ月で渡り歩くことほど無益なものはない」
実際にベンチャー企業の現場で働いた経験もある辻俊彦氏。「ベンチャー企業はどこも理不尽ですよ」とあっさり言う。
――いま大企業で働いている人の中にも「ベンチャー企業で働いてみたい」と思っている人は多いと思います。そんなベンチャーへの転職を考えている人が心得ておくべきことはありますか?
辻 「ベンチャー企業はどこも理不尽な世界です。大企業ならば、組織がしっかりしているから、自分の部署と関係のない雑務は別の部署がやってくれる。でもベンチャーは人手が少ないし組織も脆弱なので、やりたくないことを山のようにやらなければなりません。『なんでオレがやらなきゃいけないんだ?』という仕事がどんどん降ってくる。そいう理不尽さを楽しめるかどうかがポイントでしょうね。
大企業から転職した人は『ベンチャーにいけばやりたいことができる』と思って来るわけですが、実際はその前にやらなければいけないことがたくさんある。そこを耐えられるかどうかが、本当にやりたいことなのかどうかの試金石となります」
――そのあたりは、この会社(ジェイ・キャスト)もベンチャー企業なのでよく分かります(笑)。そんなベンチャー企業で働く人に、何かアドバイスはありますか?
辻 「ベンチャー企業は、今はまだ見えない『新しい価値』を社会に創造しようとしている存在なので、やりがいはあるはずです。理不尽と思える仕事やたくさんの失敗も、前向きに取り組めば必ず得られるものがあって、マニュアルでは学べないスキルが身につきます。
ベンチャー企業に入っても『自分の理想と違う』とすぐに辞めてしまう人がいますが、ベンチャー企業を数ヶ月で渡り歩くことほど無益なものはありません。まずは最低2年、目の前の仕事と正面から向き合い、本当の意味でのキャリアアップを果たしてほしいと思います」
辻氏は2008年2月15日19時から、東京・西新橋のマイクロメイツ・セミナールームで開かれるキャリアセミナーで講演する。テーマは「ベンチャーでキャリアアップが実現する5つの理由」だ。参加費は1000円。問い合わせは、コミットメンツ(TEL03-3511-8228)まで。
※「顧客に過度の期待を抱かせるな」 キャピタリスト・辻俊彦氏に聞く(下)
【辻俊彦氏プロフィール】
1960年福岡県生まれ。東京大学法学部卒。住友不動産にて新規事業の企画に従事し、複数の子会社設立を推進。その後、ベンチャー投資や事業会社での経営参画やIPO準備を経験し、2001年6月より住信インベストメントに参加。投資先企業に積極的な経営関与をするハンズオン投資を手がける。そのうちアイティメディアなど数社が株式公開を果たした。現在、同社投資第一部長として、ブルーオーシャンシステムズやチャイナ・コンシェルジュをはじめ、ベンチャー企業8社の社外取締役を務めており、ハンズオン投資を地道に実践中。ブログ「辻流」や「キャピタリストの視点」で日々の仕事で感じたことやさまざまな本の書評を記している。
※ベンチャーキャピタリストが書いた新しいビジネステキスト『愚直に積め!』を15名様にプレゼント!(応募期間2008年1月28日~2月10日)。 >>>応募フォーム