「東京湾ごしの東京」が似合うソファ
ニコラ氏のデザインしたソファ「Intersect」。大理石のようなテキスタイルが特徴的で、テキスタイル・デザイナーの須藤玲子さんと対話しながら作ったそうだ
会場の中央に、グエナエル・ニコラがデザインした「ホテルのための家具」のひとつ、Intersectというソファがあった。きちっと座るべきカタチなのだが、座る向きによって会話軸がねじれたりする面白さがある。ニコラらしいひねりだ。一見大理石のような表情のモノクロのテキスタイルも利いている。
ふと想像をめぐらせ、そのソファの背景に「東京湾ごしの東京」を置いてみる。よく似合う。タワーマンションにほしいのも、こういう緊張感のある家具なのだ。考えてみれば、隣人との会話もあまりないタワーマンションでの生活は、ホテルでの生活と似ている面がある。リラックスしているところに突然仕事がメールでやってきて、すんなりと仕事に戻ったりするには、部屋にも緊張感がないといけない。
artiの提案は確かに商業空間や公共空間への提案だが、今日の暮らし方によく合った提案だとも言えないか。今の暮らし方から家具をもう一度考える。そこには実は新しい領域が広がっている。
坂井直樹