「都心の高層マンションに住まう」という新しい暮らし方が数年前から始まっているのに、それに似合う家具も小道具もなかなかない――友人でもある、浪漫堂の倉垣光孝さんの言葉だ。その話を聞いたときは「そんなものかなぁ」と思っていたのだけれど、自分が実際にタワーマンションに住むようになって、納得した。
生活の中に「オン」と「オフ」が混在する時代
artiの内覧会が広尾のショールームにて開催された
広大な夜景はカーテンでふさぎたくない。ソファはテレビを見るためではなく、景色を含めた空間を楽しめる位置に置きたい。覗かれる訳ではないが、開け放っている分、見られている意識も住む側にそなわる。自宅にいるからオフ、という意識にはならない。
さらに、生活の中に「オン」と「オフ」が混在し、瞬時に入れ替わるようになったと多くの人が感じているはずだ。僕自身、自宅にいても何か思いついた瞬間に仕事のメールを送るし、スタッフも時間などあまり気にせずに、できあがった書類や画像を送ってくる。こちらも目につけばそれに目を通す。時にはこちらも真夜中に返信をする。どこまでが仕事の時間でどこからがプライベートなのか、ほとんどわからない。
僕たちはこんな時代に生きている。20世紀とだいぶ違ってきている。
坂井直樹