「ル・マンという窓を通して、様々なことを学んでいく」
ル・マン参戦のための風洞実験用モデル
そのような困難を乗り越えて、ようやく現実化した"夢の舞台"への挑戦――ル・マンという過酷なレースに、大学のチームがあえて挑む狙いはどこにあるのだろうか。元日産のエンジニアという経歴をもつ林教授にたずねると、次のような答えが返ってきた。
「長い歴史をもつル・マンはモータースポーツの原点。それに参加することによってモータースポーツ文化の意義を理解する手助けになる。また24時間、つまり8万6000秒を戦い抜くことで、1秒の重みを実感し、学ぶことができる」
林教授は日産時代、レーシングエンジンの開発者としてル・マンやデイトナ24時間レースなどの耐久レースに携わってきた。そんな経験から、学生たちにはル・マンを通して「レースの持つ重み」を肌で感じてもらいたいという思いがあるようだ。
挑戦の目的はそれだけではない。「チーム全員が協力する中で、社会性を身に付けることができる」という大学ならではの教育的な狙いもある。工学部だからといって「技術的」な点のみでル・マンを選んだのではなく、むしろ「メンタル面」を向上させるという目的の方が強いのだという。
「ル・マンという窓を通して、様々なことを学んでいく。ル・マンを教室にする」と、林教授は力強く語った。
いよいよ参戦が現実のものとなろうとしている「ル・マンプロジェクト」。今後は、08年1月に車両を完成させ、2月から走行テストを開始する予定だ。6月の本戦参戦はもう目の前に迫っている。