今週、あるニュースに驚いた。「ケータイ小説」が2007年の文芸部門のベストセラー・TOP3を独占したという。第1位の「恋空」は上下巻で累計200万部。映画化作品も大ヒットを記録した。
「ブンガク」をケータイで快適に読む方法
やはり今週、ひさしぶりに大学時代の友人と会った。「恋空」の存在すら知らなかった彼は「いまシェークスピアを読んでてさ」なんて恥ずかしそうに言う。文学などとはまるで無縁の男だったのに「近頃、急に興味がでてきた」のだそうだ。
「恋空」もいいけれど、大人はもう少し歯ごたえのあるものを読みたいかもしれない。そんな文学作品がケータイで手軽に快適に読めたら、それはそれで楽しくはなかろうか。今回はそのための方法を実践的に紹介してみたい。
太宰、漱石、鴎外・・・文豪の名作を網羅する「青空文庫」
文豪の作品を多数取りそろえる「青空文庫」のトップページ
ケータイで読める電子ブックやテキストを販売するサイトはいくつかある。が、骨太の文学作品を多数揃えているのは、無料のサイト「青空文庫」だ。ここには著作権の切れた作品や、著作権者が配布に同意した作品が6700以上収録されている。たとえば太宰治は212作品、森鴎外94、夏目漱石100。日本の文豪クラスは、ほぼ網羅していると言えるほどだ。
ケータイで読むときは、青空文庫の収録作品をケータイ向けに見やすく検索、表示するサイト「携帯小説 携帯文豪」が便利だろう。また、ケータイにテキストビューア機能があれば、PCでテキストをダウンロードし、ケータイに転送(USBケーブルなどの接続手段が必要)してもよい。
「縦書き表示」でブンガク気分がさらに高まる
ボイジャー社のソフトで、iPodのテキスト縦書き表示ができる
ケータイで過去の名作と再会するのは、わりと簡単だ。ただ、ウェブやパソコンのテキストにはひとつ問題がある。基本的に表示が横書きなのだ。
流行のケータイ小説はともかく、昔の文学作品の大半は縦書きで執筆されたであろう。もともと縦のものを横にすると、どうにも読みづらく、雰囲気が損なわれるように感じられる。ケータイ上でも縦書きで読みたいところだが、それを可能にする携帯アプリやPCソフトが有料・無料でいくつか出ている。
たとえば、青空文庫などのテキストを縦書きのJPEG画像で書き出すという、ユニークなPCソフトがある。ボイジャーという会社が開発したもので、これを使うと、JPEG画像を表示できるケータイ以外の機器、たとえばiPodやデジタルカメラ、PSPでも、画像を転送して縦書きで読めるのだ。
読書派にはシャープ製ケータイがおすすめ!?
筆者自身はソフトバンクのシャープ製ケータイで青空文庫を読んでいる。テキストの縦書き表示可能な「ブンコビューア」を内蔵しているので、特別な作業はいらない。PCで作品をまとめてダウンロードし、ケータイ(のSDカード)に放り込んでおく。
この読書環境、けっこう快適なのだ。フォントはわりと綺麗で読みやすく、文字サイズは大中小の3段階で、メインの中サイズ時には1行20字で表示できる(画面サイズは240×400)。さらに、ルビ表示や禁則処理、レジューム(しおり)機能もあって、ページを"めくる"のも簡単。シャープのケータイは読書関係の機能が充実しているようだ。
筆者のケータイには音楽機能もついている。これは専用プレーヤーと比べてまるで不便だし、音もイマイチで役に立たない。しかし、小説テキストとケータイのコンビは――あまり注目されないが――実用領域に達している。そのうち、女子中高生だけでなく、大人もケータイで小説を読む時代がくるかもしれないと思う筆者であった。
虎古田・純