2007年のファーストフード界を席捲したのはメガマックだったが、「いつもマクドナルド」というのも飽きてきた気がする。そう思っていたら、「ホールドバゲットという新しいファーストフードの1号店がオープンした」という噂が耳に入ってきた。発祥はデンマーク。日本で本格的に売られるのは初めてなんだとか。いったいどんな食べ物なんだろうか?
スイスのスキー場でも人気のファーストフード
バケットは「ハード」(写真下)と「ソフト」の2種類。中身はソーセージのほか、ハム&ルッコラなど数種類から選べる
その店は、東京の地下鉄・丸の内線を四谷三丁目駅で降り、外苑東通りを慶応大学病院の方向に2分ほど歩くと見つけることができる。赤いレンガタイルのビルの1階にある店の壁には「HOLE'D BAGUETTE」の大きな文字。黒いTシャツとキャップを身につけた女性スタッフが出迎えてくれた。
店頭には写真つきのメニューが置かれていて、「ホールドバゲット・・・あらびきソーセージ¥310」とか「チョリソ ソーセージ¥360」などと書いてある。ホールドバケット(HOLE'D BAGUETTE)とは、「穴の開いたバゲット」という意味。バゲット、つまりフランスパンを半分に切って穴を開け、その中にソーセージやハムを詰め込んだ食べ物だ。
一見すると、アメリカ伝来のホットドッグのように見えるが、こちらはヨーロッパのデンマークが発祥の地だという。
「ヨーロッパではスイスのスキー場なんかでも売られている人気のファーストフードで、そのうち日本にも上陸するんじゃないかと思っていたんですが、全然入ってこない。それならば自分たちが広めよう、ということで店を始めることにしたんです」
12月1日に店をオープンしたフルハウス・ジャパンの駒澤孝次社長は楽しそうに語る。彼の地では「フレンチドッグ」と呼ばれ、街頭の屋台などで売られているそうだが、日本で本格的に発売するにあたって「ホールドバゲット」という新しい名をつけ、そのまま店の名前にした。
「おいしいフランスパンを使った食べ物ということを強調したかったので、"ホールドバゲット"としました。ヨーロッパでは中にソーセージを入れているだけですが、この名前なら、ソーセージ以外のものも入れることができますからね」
歯ごたえのあるフランスパンとジューシーなソーセージ
フランス製の専用加熱器にバゲットを刺して、中から温める
ユニークなのは、その調理法だ。細長いロケット鉛筆のような形をした金属製の加熱器にフランスパンを刺して、1分30秒ほどパンの中を温める。こうすることで、固いフランスパンの中身が柔らかくなり、外側はサクサク、中はモッチリという新しい食感が生み出されるのだという。
では、そのお味はいかほど? 駒澤社長に薦められるまま、あらびきソーセージが入ったホールドバゲットをいただいてみた。
ガブッと食いついてみると、さすがにフランスパンだけあって歯ごたえがある。奥歯に力を入れて噛むと、パンの食感とともにソーセージのジューシーな味わいが口の中に広がった。「うまい」。マスタードに白ワインを加えて作ったというソースもいい感じで効いている。
「フランスパンは日本人に合うような固さと大きさのものを選んでいます。ソーセージも穴にちょうど合うように調整して作っているんですよ」
それでも、こんな歯ごたえのあるフランスパンでは高齢の人は大変だろう。そこで店では、普通のフランスパンよりずっと柔らかい「ソフトタイプ」のパンも用意して選べるようにしている。
サイドメニューも、タマネギ4分の1個をぜいたくに使った「オニオングラタンスープ」や、ジャガイモの中をくりぬき、チーズとベーコンをのせて焼いた「ポテトスキン」など、他のファーストフード店にはない工夫をこらしている。
値段はホールドバケットとスープ、ドリンクで800円近くなるから、マクドナルドなどに比べるとやや高めだ。だが、駒澤社長は「この値段でこの味を食べたいというお客さんに喜んでもらえばいい」と自信をみせる。
出足はなかなか好調で、すでにリピーターの客も来ているという。「一度に18本もまとめて買っていってくれたお客さんもいました」というから、ちょっと驚きだ。
「女性の起業家が一人で始められる店に」
手書きのメニューボードがかけられた店頭。仕事帰りのOLやサラリーマン向けにハイネケンなどヨーロッパのビールも用意している
今回オープンした「ホールドバゲット四谷三丁目店」は記念すべき1号店。今後は、2つか3つ直営店を増やし、フランチャイズ展開へつなげていく予定だ。
「2008年1月にも募集を始めたい」という駒澤社長。「フランチャイズは加盟金やロイヤリティの高さがネックとなりがちですが、うちでは女性の起業家が一人でも始められるように、加盟金やロイヤリティを低めに設定したり、直営店での研修を充実させたりしてバックアップしていきたい」と言葉に力を込める。
店の内装は赤色を基調とした、温かみのある雰囲気。ヨーロッパの街角にみられる「屋台」をイメージしたという。穏やかな太陽の光がふり注ぐ冬の午後、窓際のテーブルでは5歳ぐらいの女の子とその母親が出来たてのホールドバケットを口に運んでいた。