「高速&定額」モバイルで、ネットのカタチが変わる?

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   多少はデジタルに詳しいが、あくまでもフツー人の筆者が、デジタルの新たな動きをウォッチし、アレコレ考えてみるという当連載。栄えある第1回目は、「モバイルの高速インターネット」を取り上げてみたい。きっかけは、筆者が友人から「(携帯電話より恵まれた環境で)モバイルでネットがしたいんだけど、どうしたらベスト?」と聞かれたことだった。

   そもそもが、筆者のモバイル通信機器は携帯電話のみだ。たまに考えるのは、出先でもっと便利にネットが使えれば便利だなあという程度で、友人の質問には答えられなかった。だが、おかげでなぜか俄然興味が湧いてきた。

イー・モバイルが火をつけた定額制メガビット通信

イー・モバイルの端末「EM・ONE」。キーボードは本体に格納できるスライド式に
なっている。
イー・モバイルの端末「EM・ONE」。キーボードは本体に格納できるスライド式になっている。

   一口に「モバイルでネット」といっても、機器とネット接続の組み合わせは数多くあり、「どれがベストか」と考え出すとキリがない。しかし、話を通信部分に限ると、「モバイルの新しいカタチ」が姿を覗かせている。その火付け役は、今年3月に通信事業者のイー・モバイルが開始した「EMモバイルブロードバンド」。国内初のメガクラス・定額制モバイル通信サービスである。

   2000年ごろを境にして、ADSLなどのブロードバンド接続が、まるで枯れ草に火がつくように広がっていったが、その際の低価格化に一役買ったADSL回線業者のイー・アクセスがイー・モバイルの母体。いわばブロードバンドのモバイル版となる。

   とにかく価格が安い。これまでと比べればだが――。下りの回線速度最大3.6Mbpsの完全定額「データプラン」で約6000円。弱点はサービスエリアで、現在は首都圏と主要都市の一部に限られる点だろうか。実際にモバイルで使うには、手持ちのパソコンに接続するための通信用データカードか、家電量販店などでも見かけるWindows Mobile搭載機の「EM・ONE」が必要だ。前者は通常3万円前後(イー・モバイルオンラインストア価格)だが、来年1月15日までの期間限定「データカード乗り換えキャンペーン」で1年契約すると、データカードが実質1円(事務手数料として2835円必要)になる。

PHSデータ定額制のウィルコムが窮地!?

下り最大512kbpsが可能なウィルコムのデータカード「AX530IN」。実売価格は2万6000
円前後。
下り最大512kbpsが可能なウィルコムのデータカード「AX530IN」。実売価格は2万6000円前後。

   ところで、モバイル定額制では、以前からウィルコム(旧DDIポケット)のPHS通信サービスがメジャーな存在だった。PCカードのAIR-EDGE(エアーエッジ)を使ってる人は筆者の知り合いにも結構いたものだ。が、イーモバ後の今では、最大512kの通信速度で1万円超の料金は明らかに見劣りがする。筆者の知り合いに、かつてウィルコムを使っていたIT系フリーライター氏がいるが、「イーモバのほうが断然、魅力的だよね。ウィルコム、やばいんじゃないの」とまで仰っていた。実は11月7日に先月10月のPHS・携帯の契約数が発表されたが、ウィルコムは前月比2万3100の純減で、一人負けのような状態。消費者は正直である。これから、老舗の「反撃」に期待したい。

ついにドコモ参戦 ところが…

NTTドコモの「定額データプランHIGH-SPEED」対応のN904i。携帯電話機能とPCネット接続の両立は難しい。
NTTドコモの「定額データプランHIGH-SPEED」対応のN904i。携帯電話機能とPCネット接続の両立は難しい。

   10月には、イーモバに続く第二の波とも言える出来事があった。モバイル界の巨人、NTTドコモがついにデータ定額制に踏み切ったのだ。「定額データプランHIGH-SPEED」の場合、料金は2段階の定額制だが、下り最大3.6Mbpsで月額最大1万1千円超。サービス対応地域は国内人口の7割以上をカバーしており、都市部なら全国的に接続できそうだ。この点はイーモバより圧倒的に優位だ。

   ところが、ドコモの定額制には問題も少なくない。まず、動画ストリーミング、FTPやSkype(VoIP)、オンラインゲームなどに未対応。これでは、せっかくの広帯域も生かせず、まるで欠陥ブロードバンドだ。また、定額データプランは単独契約になり、同サービス対応の携帯電話機を買っても、SIMを2枚用意して入れ替えるなどしなければ、携帯の機能一般とパソコン接続の共存はできない(データ通信専用のカードは販売されている)。

競争が過熱すれば、新しいモバイル時代が拓ける!?

   残りの大手2社は、いまのところ静観の構え。電話料金プランについては、ドコモに即座に対抗策を取ってきたソフトバンクモバイルも「しかるべきタイミングでサービスを提供していく」と消極的だ。思い返せば、ソフトバンクも「日本にブロードバンドを実現する」と言って、ADSLに傾倒した企業だったが、モバイルとなると話が違うようだ。

   イー・モバイルが火をつけ、ドコモが油をかけたモバイル・ブロードバンドのムーブメント。しかし、モバイル自体がビジネス用途中心という性質もあってか、固定ブロードバンドのように一気に燃え広がるには至ってない。現状ではイー・モバイルがベターな選択だが、あと一声、欲しい。端末機器を含めて価格・サービスがもう一歩階段を上れば、筆者も含め、ビジネス以外の新規ユーザーもどっとなだれ込んできそうに思えるのだが、さてどうだろうか。

イーモバ、ドコモ、ウィルコムのプラン比較

事業者名 プラン名 月額料金(プロバイダー料金含む) 下り最大速度 上り最大速度
イー・モバイル データプラン 5980円 3.6Mbps 384kbps
ライトデータプラン 3480円(約17MBまで)~6480円(約52MB以上) 3.6Mbps 384kbps
NTTドコモ 定額データプランHIGH-SPEED 5040円(約61MBまで)~1万1340円(約122MB以上) 3.6Mbps 384kbps
定額データプラン64K 4725円 64kbps 64kbps
ウィルコム つなぎ放題[PRO] 1万2915円 512kbps 512kbps
つなぎ放題[4X] 9765円 256kbps 256kbps
つなぎ放題 6090円 128kbps 128kbps

虎古田・純

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