【国立研究開発法人産業技術総合研究所】 温暖期なのに昔の東京湾は冷たかった?


過去の温暖期を生きた貝化石から水温の季節変化を復元

発表のポイント
◆千葉県の下総層群のビノスガイ化石に着目し、地球全体が温暖だった時代の古東京湾の海水温の季節変動を復元しました。
◆温暖で千葉県が海面下にあった時代にもかかわらず、最高水温は現在の千葉県の沿岸域の水温よりも5度以上低く、現在の東北地方や北海道の沿岸域の水温に近かった時期があったことが分かりました。
◆過去の温暖期に海洋がどのような環境だったのかを明らかにすることは、地球温暖化が進行した場合の将来予測に大いに役立つと期待されます。

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概要
東京大学の三木志緒乃大学院生、白井厚太朗准教授、山口飛鳥准教授、棚部一成東京大学名誉教授、海洋研究開発機構 窪田薫研究員、産業技術総合研究所 中島礼総括研究主幹、マインツ大学Schöne教授、Brosset大学院生による研究グループは、ビノスガイ(学名:Mercenaria stimpsoni)の化石を用いて、過去の温暖期(約10万年前、約20万年前、約30万年前)の古東京湾の海水温の季節変化を明らかにしました。

本研究では、100歳を超える長寿二枚貝であるビノスガイと、過去の海水温の復元のための良好な条件に恵まれた千葉県の下総層群に着目しました。貝殻の成長線解析と酸素同位体比分析を用いることで、当時の海水温の季節変動を復元し、最高水温をこれまでより高い信頼性で明らかにすることに成功しました。これらの過去の温暖期は海水準が高く関東平野が海面下にあった時代ですが、最高水温は現在の千葉県の沿岸域の水温よりも5度以上低く、現在の東北地方や北海道の沿岸域の水温に近かった時期があったことが分かりました。今後、当時の海洋の環境を理解することを通して、モデリングなどによる気候の将来予測に役立つことが期待されます。

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