市場から消えた医療機関 『過去最多の786件』 「経営者の高齢化&後継者不在」が深刻化…
帝国データバンクは、「医療機関」における倒産・休廃業解散の発生状況について調査・分析を実施し、その結果を公表した。
過去最多更新
2024年の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1,000万円以上)は64件となり、2009年(52件)を大きく上回って過去最多を更新。
業態別では「病院」が6件、「診療所」が31件、「歯科医院」が27件となり、「診療所」「歯科医院」が過去最多を更新して全体を押し上げた。
収入減少と支出増加が同時進行
64件の倒産主因を分析すると、「収入の減少(販売不振)」が41件と全体の64.1%。
コロナ禍では、感染回避のため通院を控える(コロナ以外の)受診者やワクチン接種を機に施設・設備機器やサービス面を考慮して、かかりつけ医を見直す受診者が増えた。
その結果、収入が減少したり受診者が戻らない施設が増加したとみられる。
また、コロナ関連補助金の削減、資材価格高騰に伴う材料費(医薬品や検査キットなど)や設備機器費の増大。
また、人材確保・維持のための賃上げや、コロナ関連融資の返済開始などの負担も増し、収入減少と支出増加が同時に進行したことで、資金繰りに窮し事業継続を断念する事業者が増加した。
訴訟に発展
負債額最大となったのは、医療脱毛クリニックの「アリシアクリニック」を全国に展開していた医療法人美実会(負債72億9,500万円)。
美実会の関係法人で同じく「アリシアクリニック」を展開していた一般社団法人八桜会(同51億7,500万円)が続いた。
債権者数は、両法人合わせて約9万1,800名にのぼり大きな話題となった。
また、高橋デンタルオフィス(同19億円)は、インプラント治療と矯正を専門に手がけていた。
さらに、治療が進まないとして患者が前払い治療費の返還を求める訴訟に発展していたほか、治療費とは別に患者に投資や融資話を持ちかけ、この返還を求める訴訟も起こされている。
負のスパイラル
受診者が減り、資金余力が無くなった施設は、設備の更新ができず、給与・労働条件が悪くなり、スタッフも定着せず、サービス品質が低下。
結果として、更なる受診者の減少を招くという負のスパイラルに陥る。
こうした小規模事業者が増えていくことで、2025年も倒産件数は高水準で推移することが予想される。
1,000件に達する可能性
また、休廃業・解散についても、診療所の経営者の高齢化や後継者不在の現状を踏まえると、減少する要因は見当たらず、時間の経過とともに増え続けるとみられる。
2024年は倒産件数、休廃業・解散件数合わせて786件となったが、2026年には同件数は1,000件に達する可能性が高まっている。