110年の眠りから覚めた名画も!収蔵された至宝「皇居三の丸尚蔵館」特別展を取材


本日は、皇居東御苑(こうきょひがしぎょえん)内にある『皇居三の丸尚蔵館(こうきょさんのまるしょうぞうかん)』をご紹介します。こちらは、皇室ゆかりの美術品や歴史資料を保存・展示する博物館で、現在、注目の展覧会が開催されています。


2つのテーマで絵画や工芸品が展示され、『公家の書(くげのしょ)』では、平安時代から江戸時代までの貴族の書の文化に触れることができ、『皇室の美術振興(びじゅつしんこう)』では、明治から昭和にかけての美術品が楽しめます。いずれも貴重な展示となっています。どんな展覧会なのでしょうか?


今回、現地のレポートを担当したのは、アニメ漫画が好きな高木帆花(ほのか)キャスターです。



こんにちは、キャスターの高木帆花です。
ここ、皇居東御苑内にある『皇居三の丸尚蔵館』は、皇室に代々受け継がれた美術品や歴史的資料を収蔵しています。最寄りの大手町駅から徒歩約5分と、アクセスも良好です。 全て貴重な美術品ということで、ワクワクしています。さっそく行ってみたいと思います!


こちらが皇居三の丸尚蔵館です。現在は新館の建築が進められており、全館開館はしておりませんが広いですね。
ここで貴重な美術品を間近で鑑賞することができます。また、2026年に予定されている全面開館時には、展示面積が約2倍の計1300㎡に拡大されるとのことです。さらに広くなるんですね。


こちらは『公家の書』展です。平安時代の貴族が書き写した『金沢本万葉集(かなざわぼんまんようしゅう)』など、歴史的価値の高い作品が展示されています。

ここからは、この施設の「高梨(研究員)」さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。


(研究員)
よろしくお願いします。


(高木キャスター)
まず、三条西実隆(さんじょうにしさねたか)の『御注孝経(ぎょちゅうこうきょう)』とはどのような内容なのでしょうか?


(研究員)
『御注孝経』というのは、中国の古典のひとつになります。作者の三条西実隆という人は室町時代に活躍した貴族で学者としても当時知られた人物です。この人たちの仕事というのは昔から伝わる古典の内容を後世に伝えていく、いわば教養の未来への伝達というようなことも。貴族の仕事として非常に重要視されていました。


(高木キャスター)
この文字の美しさと学問の思いやり、それが両方集まった作品になっているということですね。

(高木キャスター)
一方、こちらの『皇室の美術振興』展では、明治から昭和にかけて皇室が買い上げた絵画や工芸品などを展示しています。

(高木キャスター)
110年ぶりに公開された太田喜二郎(おおたきじろう)さんの『並木道(なみきみち)』について教えていただけますか?

(研究員)
この作品は1914年の東京大正博覧会に出品された作品です。作者の太田喜二郎はベルギーに留学をしまして、そこでエミール・クラウスというベルギーの印象派の画家について勉強しました。師匠のエミール・クラウスは逆行の表現を得意としていまして、ご覧いただくように、木漏れ日の中に木がやや暗い表現で表されているんですけれども、そこが師匠のエミール・クラウスの表現をうまく踏襲している作品でして、東京大正博覧会に出品されて、皇室のお買い上げになってから今回初めて世の中に公開されることになりました。

(高木キャスター)
写真を撮ったような、鮮やかな色合いですごくすてきですね。ちなみに太田喜二郎の作品はいくつあるんですか?

(研究員)
太田喜二郎の作品は今まで回顧展も開かれておりまして、それなりに紹介されていたんですけれども、この作品だけは世の中に存在しているということが知られていなかったので、そういう意味で110年ぶりの紹介となります。

(高木キャスター)
次に、こちら荒木寛畝(あらきかんぽ)さんの『孔雀図(くじゃくず)』についても教えていただけますか。

(研究員)
この作品は1890年の第三回内国勧業博覧会に出品されて妙技2等賞を受賞した作品です。受賞のあと皇室に買い上げられまして、作者の荒木寛畝の出世作となった作品です。江戸時代の絵画にも、例えば円山応拳の孔雀図などが有名なんですが、荒木寛畝という作者は元々日本画の勉強をしていたんですが、明治時代になって、洋画・油絵の勉強もしましてその技術が活かされて、非常に鮮やかな、そして写実的な絵画になっております。

(高木キャスター)
大きな孔雀に目を奪われますね。ありがとうございます。ところで、私、すごい気になる作品があるのですが、そちらも教えていただけますか?

(高木キャスター)
こちらの「稲穂に群雀図花瓶」について教えてください。


(研究員)
こちらは1881年の第二回内国勧業博覧会に出品された作品です。作者は濤川惣助といい、七宝で有名な作家なんですけれども、七宝に専業になる前はこのように陶磁器の絵付を主に商っていました。この作品は明治天皇が非常に気に入られ、普段仕事をされる部屋のそばに置いていたと伝えられています。

(高木キャスター)
ありがとうございます。2つ気になることがあるんですが。まず一つ目に、こちらの花瓶は実際に花を生けたりしたんですか?

(研究員)
こちら非常に大きな花瓶ですので、おそらく花瓶だけをお部屋の中に飾っていたのだろうと思われます。

(高木キャスター)
ありがとうございます。二つ目に、こちらの花瓶は2つセットになっていますが、セットになっている意味はなんでしょうか?

(研究員)
おそらく明治天皇が気に入られて一つの理由だと思うんですが、実はこの花瓶それぞれ別々の内容の絵が描いてありまして、今見えている右側の花瓶は、雀が空から飛んできている様子が描かれています。雀は何に向かって飛んでいるかといいますと、こちらの左の花瓶に稲穂が干されている収穫された稲穂が干してあるんですけれども、それに向かって雀が集まってきている様子なんです。その様子は実はこの花瓶の裏側に回るとまた違う内容が見えてきます。 雀が飛んでくる様子を実は上から鳥が見ていて、稲穂を喜んで食べている雀に向かって烏が襲いかかっていくという一連のストーリーがあります。 この作品は明治時代の陶磁器の絵付の中でも非常に珍しいものだと思います。

(高木キャスター)
おもしろくて貴重な作品なんですね。岡本さん(研究員)、本日は貴重なお話ありがとうございました。

(高木キャスター)
いかがでしたか?歴史と芸術が交差する特別展『公家の書』『皇室の美術振興』。12月22日まで開催されています。

私自身、普段、美術品や工芸品を目にすることはありませんでしたが、今日見た作品は、まるで昨日書かれたかのような感覚、そして躍動感のある作品に感動しました。

貴重な美術・工芸品を間近で拝見できる贅沢な時間でした。
この機会に、ぜひみなさんも足を運んでみてはいかがでしょうか


高木さん、ありがとうございました。皇居三の丸尚蔵館の展覧会は12月22日まで開催中です。チケットは予約優先制とのことなので、事前にウェブサイトをご確認ください。

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