「真面目な出会い・セカンドパートナーをお探しのあなたに」をキャッチフレーズに掲げる、既婚者のためのマッチングアプリ「ヒールメイト」。
どんなサービスを目指し、安全を保つためにどんな工夫をしているのか。今後どんな展開を考えているのか。サービスを運営するレゾンデートル株式会社代表・磯野妙子さんに話を聞いた。
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「ヒールメイト」を運営するレゾンデートル株式会社代表・磯野妙子さん
自分自身の経験から、起業してサービスを立ち上げた
――ヒールメイトを立ち上げたきっかけを教えていただけますか。
磯野代表 実は私自身が、主人と折り合いが悪くなり、離婚を視野に入れて考えた時期がありました。ただ、当時の私は専業主婦で経済力もなく、子どもはまだ小さかった。主人も離婚に応じない。
そんな家庭の中で生活をしていると、自己肯定感が下がるんですね。第二の人生を歩みたいと思っても出会う機会さえない。そういうときに人から紹介してもらったのが、既婚者向けのマッチングサイトでした。
入会はしてみたものの、違和感があったことも事実です。その体験を通して気づいたのは、私が求めているのはつらい思いに共感したり、「あなたは大丈夫、頑張ってるよ」というような言葉をかけたりしてくれる人だったのです。
考えてみれば、世の中には私のような思いを抱える人がたくさんいるのではないか。そういう人たちの救いになる場があったらいいなと思い、起業してサービスを立ち上げました。
――主婦から起業するのは大変ではなかったですか。
磯野 結婚前は10年間看護師をして手術に従事し、特定機能病院のリスクマネジャーなどを務めてきました。会社を一から立ち上げた経験はもちろん、企業経営の経験もありませんでした。
ただ、私の父は経営者で「世の中にないサービスがあったら自分で作ればいい」という起業家精神が旺盛なタイプでした。その影響からか、「私もやってみよう、多くの方の救いになる」と確信し、思い立った瞬間からすぐに行動していました。
――会社として大事にしていることは何でしょうか。
磯野 結婚生活を送る中で、妻や夫、親といったさまざまな役割を演じることになりますが、いつしかその役割を果たすことが人生の中心になってしまう部分があると思うんです。
素の自分がどんどん失われ、役割の仮面をかぶり続けることに疲れていきます。パートナーと心が通い、お互いに癒しあえていれば苦にはならないかもしれませんが、そんな夫婦ばかりではありません。
現在のパートナーと癒しあえない状況にある人が、仮面をかぶらずに話ができ、共感しあえて、心を癒しあえる相手にめぐり会えるようなサービスにしたい。だから、癒やすという意味の「ヒール」をつけて「ヒールメイト」とネーミングしました。
また、出会いによって会員の皆様が「存在意義」を感じられる場になってほしい。そんな願いをこめて運営会社の社名は、存在意義を意味する「レゾンデートル」にしました。
安心・安全を確保する24時間365日体制の相談サービス
――現在会員数はどれくらいですか。
磯野 サービス開始1年目は2万2000人でしたが、2年目には12万人に達し、3年目の現在は30万人を超える方に登録いただいています。男女比は、男性54%、女性46%。マッチングサービスとしては女性の比率が高い傾向です。
女性がヒールメイトを「信頼性が高く安心して利用できるサービス」ととらえていただけているのかと思います。
また、システムは常によりよいものにアップデートしています。会員様から寄せられる意見もヒントに改良し、年間100以上の機能の改善を日々行っています。「グループチャット」や「イベント機能」をリリースしたのは、会員の方からの要望がきっかけでした。システム上のアンケートを使って意見を募ることもあります。
――既婚者のマッチングサービスというと「不貞行為」「男女関係が目的」というイメージをされることもあると思います。
磯野 確かにそういう方も入会されます。ですから、会員の皆様に安心して利用していただける取り組みをしています。
たとえば、明らかに「男女関係のみが目的」という人を発見したら、運営に通報できる仕組みがあります。会員様から通報を受けたら、運営が内容を確認し、程度に応じて警告や退会処分、違約金請求などのしかるべき対処をしています。金銭目的、営業目的で悪用する場合も同様です。
私たちは会員様からの相談に対し、24時間365日、いつでも速やかに対応できる体制を敷いています。何十万人もの方々に利用いただいているので、トラブルはゼロではありません。ただ万が一、大きなトラブルになっても、当社の顧問弁護士とともにできる限りのサポートをさせていただきます。
ほかにも、本来はサービス内にだけに限られるべき、お二人のやり取りのチャットをSNS上に「さらされる」ようなことがあれば、SNS運営会社に情報開示請求を行い、場合によっては当人に損害賠償請求も行っています。
マッチングしたお二人が一般的なSNSやLINEなどを使うと、問題が起きたときにやり取りの詳細がわからず、サポートが難しくなることがあるので、サービス内のチャットツールの使用を推奨しています。

エンジニアとしてのやりがいとユーザーへの責任を語る磯野さん、猪巻さん
――会員の皆さんはどんなことを求めて入会されるのでしょうか。
磯野 共感を求めていると言えるでしょうか。私たちのサービスのなかで「掲示板」が特に人気があります。1日に100件近いスレッドが立って、それぞれに何千というコメントがつくんです。掲示板では、いろいろな悩みが話し合われています。そこに注ぎ込まれる熱量をみると、既婚者がプライベートな悩みを相談できる場が世の中にはないのではということを痛感しますね。
でも、そこで救われている人がいらっしゃることは嬉しいです。家庭や子育て、離婚に関する話題など相談しづらい話題のやり取りを通じ、「人生の活力がでた」「救われた」という声も届きます。
なお、掲示板も安心して皆様に使っていただけるように、常に運営スタッフが投稿内容をチェックしています。規約違反の投稿が見受けられた場合は、原因となった方には掲示板を使用禁止とさせていただいています。
会員同士がリアルで出会えるイベントを定期的に開催
――御社は会員を集めたリアルイベントを実施されていますが、その狙いは?
磯野 1つ目の理由は、出会いの場の提供です。
たとえば、サイト内では年齢でフィルターをかけてお相手を探す方が多いのですが、そうなると年を重ねている方のチャンスが狭くなるところがありました。また、プロフィールをうまく書けない方もマッチングに至らないことが多い傾向にありました。
でも、実際にリアルで会って話してみると、プロフィールの文面からは予想がつかないほどフィーリングが合って、意気投合する方もいらっしゃいます。そういう出会いのチャンスになればと思って始めました。
2つ目は、私たち運営側と会員様とのフェイストゥフェイスの交流の場としたいためです。
サイト内で会員様から要望や助言をいただいたり、褒めていただいたり励ましていただいたりと、テキストベースの交流の機会は多いのですが、実際に顔を合わせてお話ししたいと考えました。
運営主催のイベントはこれまで東京、名古屋、大阪、福岡で開催し、2025年6月には3周年記念パーティの開催を予定しています。いつも昼夜2回に分け、それぞれの回で70人ぐらいの規模で行っています。

過去のイベントでの会員様との交流を楽しそうに語る磯野さん
磯野 運営主催イベントを実施して意外だったのは、女性はわりと同性との出会いを望んでいることです。
アンケートの事前回答だったので建前かと思っていたのですが、実際に会場で会うと「あの女性と仲良くなりたいので取り持ってもらえませんか」という依頼があるんです。身近な人に話せないことを打ち明けたい、という気持ちなのだと思います。男性同士でも、会場で知り合ってビジネスパートナーになる方がいらっしゃいます。
このほかサービス内には、会員様が自由にイベントを企画・開催できる「イベント機能」もあります。これは安心・安全な利用にも通じますが、以前、有志の会員様が個々に連絡を取りあって集まりオフ会を開催するケースがいくつかありました。
しかし、私たちの目の届かないところでの開催となると、問題が起きたときに運営が対処しにくくなるため、この機能をつくることにしました。
現在、「イベント機能」を使って、食事会や飲み会だけでなく、美術鑑賞やハイキング、バドミントンなどさまざまな会員様同士の集まりがあります。催行人数は最大12名とし、実施前に私たちに申請していただくことになっています。
――今後はどのような展開を考えていますか?
磯野 今後は、実店舗で「会員様限定ラウンジ」を開いたり、常設のイベントスペースを作りさまざまな催しを行ったりしたいと考えています。
「ここに来たら自分以外の会員に会える」というリアルな場をつくることで、既婚者同士のさらなる交流の場を提供できればと構想しています。まずは都内で試験的に開設してみて、会員様の反応やお声を聞きながら広げていければいいなと計画中です。
こうした新たな取り組みにおいても、私たちが勝手に進めるのではなく、これまでのように会員の皆様の意見を大切にしていきたいと思っています。

ヒールメイトは「真剣な既婚者同士の出会い」を目的とした方に特化したサービス。
運営スタッフがサイト内を24時間365日監視チェックし、不適切な投稿など迷惑行為とみなされた会員に速やかに対応するなど、安心・安全に向けた取り組みをおこなっている。
利用料は、女性は無料。男性は月額9800円~。