大阪IR(統合型リゾート)は未来の観光経済を切り拓くか 東南アジア・中東のIR開発とともに注目

提供:Nichicasi

   統合型リゾート(IR)は、日本だけでなく中東や東南アジアでも経済成長の推進力として注目を集めている。

   日本では、2018年に成立した「特定複合観光施設区域整備法」(IR実施法)に基づき、大阪IRの実現に向けた取り組みが進行中で、これは日本のカジノ合法化の第一歩として国内で大きな関心を呼んでいる。

   一方で東南アジアでは、IRの開発で成功を収めているシンガポールに続こうと、競争が激化している。フィリピンでは、安定した経済成長を背景に、フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)が大規模な投資計画を発表した。また、タイでは2024年に入り、カジノ合法化に関する議論が活発に行われている。

   さらに中東地域に目を向けると、アラブ首長国連邦(UAE)が2027年初頭にペルシャ湾に面した人口島に高級統合型リゾート(IR)施設の開業を予定しているなど、IR産業への関心が高まっている。

   大阪IRの計画と期待される経済効果を含め、東南アジア・中東のIR市場の最新動向はどうなっているのだろうか。

大阪IRの計画と経済効果

   2030年秋頃の開業を目指している大阪IRは、大阪湾の人工島「夢洲」に建設される大規模な複合施設だ。「結びの水都」をコンセプトに、総延床面積約77万平方メートルの敷地にカジノ(全体の約3%)、日本最大級の国際会議場、展示場、3つの宿泊施設、エンターテイメント施設などが建設される予定だ。

   大阪IRの初期投資額は約1兆800億円で、年間売上高は約5200億円を見込んでいる。経済波及効果は建設時に約1兆5800億円、運営時には毎年約1兆1400億円と試算されている。年間来訪者数は約2000万人を目標としており、近畿圏で約9.3万人の新規雇用が期待されている。

   日本初のIRプロジェクトは、大阪・関西の持続的な経済成長のエンジンとして、観光産業の基幹産業化を図るとともに、IR事業者から納められる納付金や入場料は、住民福祉の増進や大阪の成長につながる施策に活用されると発表されている。

東南アジア・中東のIR市場の状況は

   東南アジアのIR(統合型リゾート)市場は、2000年代に入り、急速な成長を遂げている。シンガポールは2010年にIRを導入し、マリーナベイ・サンズとリゾート・ワールド・セントーサという2つの大規模IRが成功を収めている。

   フィリピンでは、マニラ湾岸地域を中心に複数のIR施設がすでに稼働していて、エンターテインメント・シティと呼ばれるエリアが形成されている。「ソレア・リゾート&カジノ」、「シティ・オブ・ドリームズ・マニラ」、「オカダ マニラ」、「リゾーツ・ワールド・マニラ」などの大規模IR施設が、国際的な観光客に注目され、アジアのカジノ市場における重要なポジションを確立しつつある。

   また、東南アジアで経済規模が大きい国の一つであるタイでも、2024年3月にタイ下院が、カジノ併設を認める議会の委員会報告を支持し、カジノ合法化への一歩を踏み出したことは記憶に新しいだろう。

   中東地域では、アラブ首長国連邦(UAE)のラアス・アル・ハイマ首長国で、2027年1月に中東初のカジノを含むウィン・リゾートによる39億ドル規模の高級リゾート施設が開業予定だ。このプロジェクトはUAEの経済多角化戦略の一環で、観光産業の発展を目指している。

   他の中東諸国もUAEのIRプロジェクトの成功を注視しつつ、自国の文化的・宗教的背景を考慮しながらIR導入の可能性を探っている。

大阪IRと中東・東南アジアのIRの課題と対策は

   大阪IRや中東・東南アジアのIRプロジェクトは、それぞれの地域の特徴を活かした開発が進められている。今後、IR産業は、観光産業に新たな可能性をもたらし、経済の活性化や雇用の創出といった好影響が期待されている。

   しかし、経済効果が期待される一方で、ギャンブル依存症や地域社会への影響といった課題に直面していることも事実である。これに対し、各国では入場制限や相談窓口の設置などの対策を講じている。

   たとえば、大阪IRでは、最新技術を活用した入場管理や専門センターの設置を計画し、持続可能な開発を推進している。また、日本人に対してカジノ施設の入場料を設けることや、日本人の入場回数を1週間で最大3回、4週間で合計10回に制限するなど、依存症対策にも積極的に取り組んでいる。これらの施策により、健全かつ持続可能な開発を促進している。

   今後のIR施設の発展には、経済効果と社会的責任のバランスが重要だ。都市機能の充実や周辺観光資源との連携強化により、IRを地域の総合的な発展の核とすることが求められる。また、さまざまな施設の魅力向上によって、収益構造の多様化を図ることも重要な課題だろう。

   これらの取り組みを通じて、IRが地域経済の活性化と観光振興に貢献しつつ、社会的な懸念に適切に対応できる持続可能な施設となることが求められる。(提供:Nichicasi)

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