トレンドマイクロの子会社VicOne(ヴィックワン/東京都新宿区)は2024年7月29日に、サイバーセキュリティコンテストの「Automotive CTF Japan(オートモーティブ キャプチャー・ザ・フラッグ ジャパン)」のプレセッションとして、事前レクチャーや関係者による講演などを都内で開催した。
「Automotive CTF Japan」の主催は経済産業省。VicOneおよび三菱総合研究所が運営する。
この日のプレセッションには、8月25日~9月8日に開催される「Automotive CTF Japan予選」に向けて、自動車業界のサイバーセキュリティの動向や、コンテストで出題される問題の解説などがあり、参加者は競技に対する意識を高めた。
自動車産業は、部品製造から制御用ソフトウェアにシフト
「Automotive CTF Japan」は24年度から開催されるセキュリティの専門知識や技術力を競い合うコンテストだ。自動車サイバーセキュリティ人材の裾野拡大を目的としている。専門知識や技術を駆使しながら、問題を解き、時間内に獲得した点数を競う。
背景として、近年、自動車の「価値」が機械部品からソフトウェア制御へと大きく変わろうとしている状況がある。そこで、自動車のソフトウェア人材の不足を解消するため、この分野の認知拡大、人材の確保、知識向上のためのトレーニング機会の提供につなげていきたい考えだという。
7月29日は今回のコンテストの説明として、VicOneのエンジニアリング部脆弱性担当エキスパートリーダーの山本精吾氏が登壇した。
山本氏は、日本予選の開催の意義として、「自動車サイバーセキュリティのスペシャリストの育成」、「サイバーセキュリティコミュニティと自動車業界のコラボレーションの促進」、「セキュリティ弱点の気づきによる自動車サイバーセキュリティの強化」の3点を挙げた。
また、山本氏は、ソフトウェアによって自動車の機能がアップデートされることを前提に設計・開発していく「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)」が今後の主流になることを指摘。すると、自動車を制御するソフトウェアを更新し、販売後も機能を増やしたり性能を高めたりできるが、それだけに「SDVを見据えたサイバーセキュリティ態勢の強化が必要となっている」と強調した。
日本予選は、8月25日~9月8日にオンラインで開催する。出場者は18歳以上の個人、または最大5人のチームで構成できる。年齢制限は設けない。7月29日の時点で、予選にエントリーした人は278人という。
予選の上位5チームは9月13日のベルサール六本木で日本決勝戦が行われる。同時期に米国とその他グローバルでも予選を行い、日本の決勝上位2チームは10月に米国で開催される世界大会の決勝戦に進める。
なお、この日のイベントでは山本氏が、初級問題と中級問題の演習を実施。問題文の指示に従って、必要な情報を手に入れる方法を解説し、参加者は熱心に聞き入った。
このほか、名古屋大学大学院情報学研究科の倉地亮特任准教授が「自動車サイバーセキュリティの現状と人材確保への取り組み」を演題に講演し、トヨタ自動車の情報通信企画部の小熊寿主査がTOYOTAの取り組む自動車サイバーセキュリティの現状について説明した。