昭和から平成、令和に変わって意識の変化などによって、上司と部下の関係に変化が起きている。
キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ」を開発・運営する株式会社ライボの調査機関「Job総研」は、2024年2月19日に「2024年 上司と部下の意識調査」を発表した。
調査によると、部下がいる上司に「部下の理想像」を聞いたところ、「コミュニケーションを大切にする」が59.7%で最多に。続いて「自身の考えや提案を積極的に伝える」が50.0%、「自己管理と能力の向上に努める」が44.4%となった。
一方で、現在上司がいると回答した部下に対して「上司との関わりで意識すること」を質問すると「敬意を払う」が60.9%で最多となった。そして、「コミュニケーションを大切にする」が56.5%、「上司の指示に従う」が53.6%で、上位3つの回答となった。
部下に求められることは昭和から令和で変化したか?
この調査は、現在職を持つ、JobQ Townに登録するすべての社会人629人を対象に、2024年1月31日から2月5日までインターネット調査を行ったもの。対象は全国の20代から50代の男女。
はじめに、「部下に求められることは昭和から令和で変化したと感じるか」(図1)と質問。その結果、「変化したと思う」(とても変化したと思う:22.4%、変化したと思う:26.6%、どちらかといえば変化したと思う:28.8%)は合わせて77.8%となった。
「変化したと思う派」の上司・部下別の回答(図1)では双方で大きな差は見られず、上司が82.7%、部下が84.0%の結果になりました。
続いて、変化したと思うと回答した489人に「変化したと思うこと」と「変化に影響したと思う背景」(どちらも図2)を質問。これについては、特に変化していると思うことには、「プライベートの優先度」が52.8%で最多となった。次いで「コミュニケーション」が48.5%、「職場や仕事に対する考え方」が42.7%となった。
変化に影響したと思う背景には、「労働環境の変化」が55.0%、「多様性の尊重」が52.8%、「ライフスタイルの多様化」が46.6%となった。
上司に聞いた部下の理想像...1位「コミュニケーションを大切にする」
つぎに、現在部下がいると回答した162人に「部下の理想像」(図3)を聞いた。「コミュニケーションを大切にする」が59.7%で最多に。続いて「自身の考えや提案を積極的に伝える」が50.0%、「自己管理と能力の向上に努める」が44.4%となった。
一方で、現在上司がいると回答した487人に対して「上司との関わりで意識すること」(図3)を質問した。「敬意を払う」が60.9%で最多となった。引き続き、「コミュニケーションを大切にする」が56.5%、「上司の指示に従う」は53.6%となり、上位3つの回答となった。
上司が部下に忖度した経験「ある」が91.4%に
また、現在部下がいると回答した162人に「部下への忖度経験」(図4)を聞くと、「とてもある」が17.9%、「ある」が34.6%、「どちらかといえばある」が38.9%となり、合わせた「ある派」は91.4%で9割にも上った。
さらに、「具体的な忖度の内容」を質問すると、「トラブルやミスが起きたとき」が60.1%、「業務の優先順位や量の変更があるとき」が45.9%、「チームの雰囲気が良くないとき」が39.9%の3つが上位となった。
以下、「フィードバックをするとき」が37.2%、「リモートワークをするとき」が20.3%、「給与や昇進の話をするとき」が18.9%という結果になった。
これに対して、部下側はどうか。現在上司がいると回答した487人に、上司への忖度経験を聞くと(図5)、「ある派」(とてもある:11.7%、ある:29.3%、どちらかといえばある:30.8%の合計)は71.8%で過半数を占めた。
部下である277人には、具体的な場面を聞くと(図5)、「気に入られるために同調をしておく」が58.1%、「衝突しないよう自分の意見を控える」が48.0%、「自身の評価を下げないため批判的意見は避ける」が45.8%で上位3つの回答になった。
「上司も部下に忖度する時代」を前提としたコミュニケーションを
最後に、全体の629人に上司と部下の振る舞いへの賛否を聞くと、「『部下が上司に合わせる』に賛成」派(部下が合わせるにとても賛成:6.8%、部下が合わせる風潮に賛成:16.4%、どちらかといえば部下が合わせるに賛成:43.2%の合計)が66.4%で過半数だった。
また、上司部下別の回答では、上司が「『部下が上司に合わせる』への賛成」派(部下が合わせるにとても賛成:2.5%、部下が合わせるに賛成:14.6%、どちらかといえば部下が合わせるに賛成:48.3%の合計)が65.4%で最多。
これに対して、部下が「『部下が上司に合わせる』への賛成」派は64.8%(部下が合わせるにとても賛成:4.9%、部下が合わせるに賛成:14.8%、どちらかといえば部下が合わせるに賛成:45.1%の合計)の結果になった。
回答者のコメントを見てみると、上司からは、こんな声が。
・私が部下だった時はなんでも上司に合わせるのが普通だった。今は部下が個人として尊重されている
・部下の方がものを言いやすい時代に変わった。パワハラを恐れ上司としては強く出にくい
・なんでもない一言がハラスメントに該当しないかとても気を遣う時はあるが、部下とは仲良くしたい
一方、部下からは、こんな意見が。
・上司には忖度するが、それは上司に気に入ってもらい関係性を深めたいと思っているから
・案外忖度をすることで、一定の信頼や関係構築に繋がっているのかもと上司と関わっていて思う
・部下が忖度するのは令和でも変わらない。関係性維持のためにも上司を立てるのも部下の役割
Job総研室長の堀雅一氏は、「回答結果からも一定数『部下が合わせる』という、昭和の風潮が続く傾向も見られているため、職場でのコミュニケーションエラーを防ぐためにも、今後は双方が『上司も部下に忖度する時代』を前提としたコミュニケーションを取っていく必要が考えられる調査結果となりました」と総括した。