2024年に残業時間の上限規制によって人手不足に拍車がかかるといわれている「建設業の2024年問題」。その認識は、広まっているのだろうか。事業規模別でみるとどのような傾向があるのだろうか。
建設DXに取り組む野原グループは2024年2月19日、建設業の人手不足や採用の今後などに関わって「建設2024年問題の捉え方」に関する調査結果を発表した。
それによると、建設業界で悪化するであろうことには中小企業も大手企業も「適正工期の見直しは難しいため、働き方はかえって厳しくなる」(中小企業:34.6%、大手企業:33.6%)という課題を感じていることがわかった。
建設2024年問題、「聞いたことがない・知らない」中小企業で18.7%
この調査は2024年1月15日から1月22日までの間、全国の建設業界従事者の20代から70代まで1000人を対象として、ゼネラルリサーチに調査委託してインターネット調査を行ったもの。
はじめに、建設2024年問題の認知度について調査では(図1)、その内容を把握しているか質問すると、全体では「詳しく把握している」が37.7%、「聞いたことがあるが詳細までは把握していない」が46.6%、「聞いたことがない・知らない」が15.7%という結果になった。
中小企業と大手企業を比べると、「聞いたことがない・知らない」は中小企業で18.7%、大手企業では8.3%となった。さらに、「詳しく把握している」の割合は大手企業で60.6%、中小企業では28.4%となり、会社規模によって認知度に大きな差が出ていることがわかる。
続いて、建設2024年問題で悪化すると思うことを質問した(図2)。全体で1位は「適正工期の見直しは難しいため、働き方はかえって厳しくなる(34.3%)」となり、2位は「ますます若手入社希望者が減少する(28.0%)」、3位は「臨時的な特別の事情がある場合がある限り、残業は減らず休暇も取れない(23.5%)」という結果になった。
さらに、大手企業では、全体・中小企業で3位に上がっていた「臨時的な特別の事情がある場合がある限り、残業は減らず休暇も取れない」に加えて、同率で「時間給・日給が減ることになるためむしろ困る(27.2%)」が3位にランクインしている。
同社は次のように分析している。
「『適正工期の見直しは難しいため、働き方はかえって厳しくなる』との懸念は、経営層(28.9%)よりも管理職(36.7%)・一般職(35.1%)の方が強く、建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事)では36.0%との結果となった。
これらの結果から、労働時間管理(勤怠管理)や現場に携わる方ほど、工期順守と労働時間の両立の難しさに懸念を感じていることがうかがえる」
人出不足への対応、1位「若手の採用(32.6%)」、2位「対策は出来ていない・検討もされていない(31.5%)」に
つぎに、建設2024年問題と人手不足・採用の今後について質問した(図3)。それによると、全体、中小企業、大手企業のすべてで1割を割り込み、低い結果となった。「悪くなっていくと思う」と回答した割合を見ると、中小企業で43.6%、大手企業で49.1%となり、半数に迫る結果になった。
一方で、「建設2024年問題に限らず、人手不足問題に対して所属している会社はどのような対策を講じていますか?」と聞くと(図4)、1位は「若手の採用(32.6%」、2位が「対策は出来ていない・検討もされていない(31.5%)」、3位は「従業員の給与ベースアップ(20.7%)」という結果が出た。
これらの結果から同社は総括として、
「『人手不足対策』は『採用活動(78%)』が最多であり、『デジタル化(ICT導入・DX化の導入推進)による生産性の向上(14.9%)』は進んでいないことが分かる。
今後の労働人口不足が確実と言われ、前述の通り、『建設2024年問題と人手不足・採用の今後』について「人手不足と採用の改善」に期待するのは6.9%と1割にも満たない。
このことから、建設産業では、従来同様の『人』に頼りすぎる対策よりも、『デジタル化(ICT導入・DX化の導入推進)による生産性の向上』への移行が求められるのではないか」
とコメントしている。