人権保護やデジタル経済、参加国の対立が解消できず デジタル経済の交渉は、米国として交渉を進めにくい実情も
一方、積み残しになった「貿易円滑化」は、手続きのペーパーレス化など参加国の意見の相違がない部分では一致したが、人権保護やデジタル経済などでは参加国の対立が解消できなかった。
人権保護などは、制度整備の支援なども組み合わせながら、新興国に受け入れ求めることになる。
デジタル経済分野については、米国内で民主党を中心に、データの越境移動の自由など高度なデジタル貿易を巡るルールづくりへの反発があることが障害になっている。
米国が離脱したTPPはデータ流通の詳細なルールを盛り込んでおり、これに劣るような合意しかできなければ、IPEFの存在意義が問われかねない。
だが、米国は2024年秋の大統領選を控え、バイデン政権は支持層からの要請もあってIT大手に対する規制を強めようとしており、デジタル経済の交渉を進めにくいのが実情だ。
もちろん、大統領選でトランプ氏が返り咲くようなら、TPP同様、IPEFからも離脱するなど空中分解の可能性も取りざたされる。
先行き不透明感を抱えながら、IPEFをいかに実効あるものにしていくか。米国と新興国の間に立つかたちの日本の果たすべき役割もまた大きい。(ジャーナリスト 白井俊郎)