ポンプ最大手、荏原製作所の株価が2023年11月15日の東京株式市場で一時、前日終値比804円(11.1%)高の8060円まで上昇し、年初来高値を更新した。
前日14日の取引終了後に発表した2023年1~9月期連結決算(国際会計基準)が2桁の増収増益で過去最高益と好調で、投資家の買いを集めた。
米国の金利低下を背景に全体が上げ相場になっていることも追い風に、その後も上値を追う展開となっている。
23年1~9月期、最終利益は27.9%増 主力「精密・電子」は低調も、「エネルギー」は海外案件の受注が好調
それでは決算内容を確認しておこう。売上高にあたる売上収益は前年同期比14.8%増の5512億円、営業利益は33.5%増の569億円、最終利益は27.9%増の349億円と、いずれも過去最高を更新した。公共インフラ向けのポンプ需要が堅調で、円安も増益に寄与した。
半導体メーカーの設備投資抑制の動きから、主力の精密・電子は受注高が前年同期比33.6%減と低調だったが、エネルギーは海外案件の受注が伸びて前年同期比85.2%増に達し、精密・電子を補ったかたちだ。
これは、地政学リスクを背景に、エネルギーの安定供給が望まれる中で液化天然ガス(LNG)関連のポンプ需要が高まり、北米を中心にLNG市場向けで大型案件を複数受注した。アジアでも石油化学市場向けの大型案件を受注した。
この結果、受注高は前年同期比0.6%増の5983億円となり。わずかながら過去最高を更新した。
ちなみに荏原は、1912年創業の老舗。祖業のポンプを今も主力とし、冷熱機械や送風機、環境プラントを展開している。半導体関連装置として、真空ポンプなどを扱っている。
営業利益、3四半期の進捗率80.2%...通期見通しは「いずれ上方修正」の期待
業績は好調だが、売上収益や各利益の通期予想は据え置いた。といっても、営業利益の通期予想に対する進捗率は80.2%に達しており、「いずれ上方修正する」との期待感も投資家の買い意欲を支えている。
SMBC日興証券が11月15日に配信したリポートは、決算内容について「受注、利益両面で想定よりも堅調でポジティブ」と評価した。
とくに7~9月期の営業利益が、前年同期比49.8%増と大きく伸びた点に着目。「通常、4Q(10~12月期)は利益が高水準となるタイミングであり、会社通期計画は保守的な印象」と指摘した。
懸念される半導体関連の精密・電子事業についても「7~9月期を見れば受注高は前年同期を上回っている。2024年12月期において減益幅が大きくなるリスクが小さくなった印象」と記して、底入れへの期待感を示した。(ジャーナリスト 済田経夫)