年末恒例の「RJCカーオブザイヤー」に、2023年は日産自動車の「セレナ」が決まった。残るもう1つの「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は12月7日に決定する。
日産セレナは日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考にも残っているが、ダブル受賞は考えにくいところか。日本カー・オブ・ザ・イヤーは「SUBARU(スバル)クロストレック」「トヨタプリウス」「ホンダZR-V」などの受賞が予想される。
RJCカーオブザイヤー、実用的なファミリーカーの受賞が多い 日産セレナ...ゆったり座れる居住空間、高い静粛性など評価
年末恒例の日本の「カーオブザイヤー」には、著名な賞が2つある。「実用性重視」の「RJCカーオブザイヤー」と、「走り重視」の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」だ。
まず発表があったのは、2023年のRJCカーオブザイヤー。最終選考の結果、日産セレナが127点でトップとなった。2位以下は、スバルレヴォークレイバックが98点、スバルクロストレックが92点、ホンダZR-Vが83点、三菱デリカミニが74点、ホンダN-BOXが72点で続いた。
日産セレナの受賞について、主催者のNPO法人・日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)は「フル乗車でもゆったり座れる居住空間と高い静粛性、先進運転支援システム『プロパイロット2.0』を採用し、家族が安心して笑顔で過ごせる車となった」と評価した。
輸入車部門の首位はSUVの「BMW X1シリーズ」で、「プジョー408」「フォルクスワーゲンID.4」などが続いた。
RJCカーオブザイヤーは、従来の日本カー・オブ・ザ・イヤーを「メーカーの接待づけになっている」「評価がクルマの運動性能に偏重している」などと批判し、1991年に発足した経緯がある。このため、実用的なファミリーカーが受賞するケースが多く、今回の日産セレナの受賞も納得がいく。
日本カー・オブ・ザ・イヤー、最終選考に残った「10ベストカー」の中から決定 前回は「日産サクラ」「三菱eKクロスEV」ジンクス破るダブル受賞
これに対して、日本カー・オブ・ザ・イヤーは、自動車雑誌の出版社などが実行委員会を作り、自動車評論家やモータージャーナリストなどが選考委員を務めている。このため、これまでは高級車やスポーツカーの受賞が多かった。
2023年の日本カー・オブ・ザ・イヤーは11月3日、最終選考に残った10台を「10ベストカー」として発表した。
ノミネート順に、スバルクロストレック▽トヨタアルファード/ヴェルファイア▽トヨタプリウス▽日産セレナ▽ホンダZR-V▽三菱デリカミニ▽ステランティス・アバルト500e▽BMW X1▽マセラティグレカーレ▽フォルクスワーゲンID.4――の10台だ。この中から「今年の1台」が決まる。
ノミネート車を見てわかるように、RJCカーオブザイヤーと重なる部分はあるものの、顔ぶれは異なる。今回はいわゆる「走り屋」向けのスポーツカーは含まれていない。だが、アバルト500eとマセラティグレカーレなど、実用車だけでなく、趣味性の高いクルマが含まれているのが特徴だ。
2022年は「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」がRJCカーオブザイヤーと日本カー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞した。かつては、11月にRJCカーオブザイヤーを受賞したクルマは12月の日本カー・オブ・ザ・イヤーとならないジンクスがあった。22年はそんなジンクスを破ってのダブル受賞だった。
実は、その前の2021年も日産ノートが両賞を受けており、ダブル受賞は珍しくなくなったともいえる。とはいえ、前年の日産サクラと三菱eKクロスEVは、軽の本格的な電気自動車として画期的だった。今回の日産セレナにそこまでの先進性はない。
そこで、選考委員の関心を集めそうなのは、「走り」のよいスバルクロストレックを筆頭に、トヨタプリウス、ホンダZR-Vあたりだろう。
2つのカーオブザイヤーの存在意義を示すためにも、今回は結果として両賞は棲み分けを図ることになるのではないか。(ジャーナリスト 岩城諒)