デンソー製燃料ポンプ、搭載車リコール268万台の衝撃...業界への影響、どこまで拡大

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   トヨタ自動車直系の自動車部品最大手、デンソー製の燃料ポンプに不具合が相次ぎ、計約268万台がリコール(回収・無償修理)されている。

   これ以外にも、どの車に取り付けられたか特定できない燃料ポンプが5000個超あることも発覚するなど、影響がさらに拡大する可能性がある。

  • デンソー製の燃料ポンプに不具合が相次ぎ、リコールに(写真はイメージ)
    デンソー製の燃料ポンプに不具合が相次ぎ、リコールに(写真はイメージ)
  • デンソー製の燃料ポンプに不具合が相次ぎ、リコールに(写真はイメージ)

「よくあるリコール」と思われたが...以前の分含め、朝日が「特ダネ」一面トップ報道

   リコールの責任は、基本的に自動車の完成車メーカーが負う。判明したものはその都度、各社が国土交通省に届け出て、広く周知しながら修理する。

   今回は、デンソーという大サプライヤーの部品であることから、複数の完成車メーカーにまたがって広汎なリコールに発展しているのが特徴だ。

   当初はトヨタなどの、よくあるリコールとして、必ずしも大きく報道されたわけではなかった。たとえば日経新聞は、2023年11月3日朝刊の第2社会面の一番下に「トヨタ32万台リコール ダイハツは26万台」の見出しで、わずか本文13行のベタ記事を掲載しただけだった。

   ちなみに、リコールは新聞社では、企業担当の経済部、産業部などではなく、社会部が担当していることが多いので、大きな事案でなければ社会面に掲載されるのが一般的。今回の日経新聞も、トヨタなどの発表をそのまま載せたものだ。

   そんな中で、朝日新聞だけが11月3日朝刊1面トップで、真っ黒い凸版の4段見出しを掲げ、「デンソー製搭載 リコール268万台」と大きく報じた。

   リコールで、どこの部品メーカー製かは通常は明らかにされないが、朝日は、今回の発表の分に、これ以前の分も含め、独自にデンソーに取材し、268万台が同社製部品によるものであると確認して報じた。

   実は、23年6月にホンダが約30万台のリコールを届けた時点で、自動車専門サイトなどで「『デンソー製と思われる』燃料ポンプのリコール台数が累計210万台突破」などと報じられていた。朝日新聞は、今回のトヨタなどの発表分を足し、デンソーに確認を求めたのだろう。

   いずれにせよ、ことは一気に拡大し、トヨタなどのリコールを小さく報じたり、そもそも報じなかったりした他の新聞は、翌4日に「268万台」と朝日の「特ダネ」を追いかけるかたちになった。

搭載車リコール計8社で17回...海外含め1245万台に及ぶとの報道

   これまでに判明している事実を確認しておこう。トヨタ、ホンダなど8つの完成車メーカーが2020年3月以降に、デンソー製の燃料ポンプの不具合で、計268万台のリコールを届け出た。さらに、海外でも計1000万台超の同種のリコールを届け出ているので、世界全体では1245万台になるとの報道もある。

   不具合があったのは燃料ポンプの「インペラ」という樹脂製の部品で、燃料を吸い上げられなくなることがあり、最悪の場合、エンストを起こすという。

   リコール対象は2013年9月~20年9月に製造されたもの。今回は、トヨタとダイハツが、それぞれ3回目の届け出をした。だが、ホンダはこれまでに5回、英ホンダが2回、米ホンダ、マツダ、スズキ、スバルが各1回届けていて、リコールは計8社17回にのぼる。

   さらに、交換・修理用の部品として完成車メーカーにわたり、実際に搭載された車両がわかっていない燃料ポンプが計5000個超あることも判明。国交省は取り付けられた車両の特定を急ぐよう、各完成車メーカーに指示している。

デンソー、対策費2900億円を投入...「原因究明に手こずっている?」との懸念も

   デンソーは22年9月に、燃料ポンプ事業を、同じトヨタグループの自動車部品会社に売却しているが、完成車メーカーと協力して対応していくことになる。

   林新之助デンソー社長は11月15日にオンラインで事業説明会を開き、「ご心配とご迷惑をおかけしていることをおわび申し上げる」などと陳謝。

   対策費としてすでに2900億円を計上し、「新たな引き当ては現時点ではない」と説明したが、「この後どうなるかは、計り知れないところがあるのが正直なところだ」とも語った。デンソーの株価には今のところ、特に大きな影響は出ていない。

   近年、製造コストを抑えるため、メーカーや車種をまたいで共通の部品を使うケースが増えており、一度、不具合が起きると、今回のように被害が拡大、長期化する恐れが強まっている。

   特に今回はトヨタでさえ3回もリコールを重ねているように、「真の原因究明に手こずっている可能性がある」(大手紙経済部デスク)との指摘があり、リコールのさらなる拡大、ひいては、今後の車づくり全体への影響を懸念する声も出始めている。(ジャーナリスト 済田経夫)

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