花王の株価が2023年11月9日の東京株式市場で一時、前日終値比394円(7.3%)高の5766円まで上昇した。
前日8日に発表した2023年1~9月期連結決算(国際会計基準)は営業利益が前年同期比34.1%減とさえない結果だったが、直近の四半期(7~9月期)に限ると利益面は市場予想を上回る水準に達しており、ポジティブサプライズから買いが集まった。
構造改革費用は通期で600億円...成果は24年12月期から、利益面で反転攻勢か
それでは1~9月期と7~9月期の決算内容を確認しておこう。1~9月期は売上高が前年同期比0.2%減の1兆1258億円、営業利益は前述の通り34.1%減の507億円、最終利益は44.2%減の325億円だった。
日用品などの値上げは浸透しているが、中国で紙おむつの生産を停止するなどの構造改革費用が201億円かかることが影響した。
構造改革費用は通期で約600億円を計画しており、10~12月期に約400億円を計上する方針。
400億円の内訳はベビー用紙おむつ関連で約50億円、その他事業・ブランド商品の統廃合で約100億円、人財構造改革(早期退職)で約250億円と今回開示した。早期退職者は12月上旬から募集を始めるが、目標となる人数などは開示していない。
花王は23年12月期まで5期連続で最終減益を見込んでいる。構造改革の成果を踏まえて24年12月期から利益面での反転攻勢に転じる構えであることも、ある程度評価されているようだ。
23年7~9月期の「コア営業利益」、市場予想上回り前年同期比56.2%増の363億円に
他方、7~9月期は売上高が前年同期比1.6%減の3873億円、最終利益は18.1%減の159億円。ただ、市場で重視されている、構造改革費用などを除く「コア営業利益」は前年同期比56.2%増の363億円となった(花王の会計上、構造改革費用はまともに営業利益に響くようになっている)。
7~9月期のコア営業利益は、発表当日の市場予想平均(322億円)を13%程度上回った。日用品などの値上げ効果のほか販管費の効率化も貢献した。
7~9月期の決算内容について野村証券は発表後のリポートで「ややポジティブ。日本での値上げ等の進捗が良好」と指摘した。SMBC日興証券も7~9月期について「値上げ効果は想定以上」として「ポジティブ」と記した。
株価は8月14日につけた年初来高値(5828円)をうかがう水準まで浮上している。早期退職などのリストラ効果を踏まえた成長軌道への回復を投資家がどう読むかが、さらに上値を追うか、調整するかを左右することになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)