ヤマトホールディングス(HD)の株価が2023年11月2日の東京株式市場で一時、前日終値比106円(4.2%)安の2447円50銭まで下落した。前日1日の取引終了後、2024年3月期連結決算の業績予想を下方修正したことが嫌気された。
人手不足をはじめ陸運業界を取り巻く環境は厳しく、上昇基調に転じることは容易ではないとの見方もある。
23年9月中間連結決算、最終利益は前年同期比48.0%減に
それでは下方修正の内容を確認しておこう。売上高にあたる営業収益は従来予想より350億円減額し1兆7850億円(前期比0.9%減)、営業利益は従来予想比150億円減額し650億円(前期比8.2%増)、最終利益は従来予想比60億円減額し520億円(前期比13.3%増)を見込んだ。
ヤマトHDは「営業収益は上期の業績状況や足元の需要動向を勘案した結果、前回予想を下回る見込みとなった。営業利益は引き続きコストの適正化に向けた取り組みに注力するものの前回予想を下回る」などと説明している。
今回の下方修正については、同時に発表した23年9月中間連結決算を見ることでその背景を理解できる。営業収益は前年同期比1.9%減の8665億円、営業利益は前年同期比31.5%減の123億円、最終利益は前年同期比48.0%減の53億円だった。
コロナ禍で盛んだった「巣ごもり需要」がはく落し、「宅配便」などで配達する荷物の減少が個人向け、法人向けともに続いている。そのことが減収、並びに減益の大きな要因だ。利益面では燃料費、人件費の上昇が減益方向に効いている状態が続いている。
市場はネガティブな印象と受け止め...目標株価引き下げの動きも
こうした上半期の状況を受けて通期予想を下方修正したわけだが、「下半期も(荷物の)数量減が続くことに加えて単価想定の引き下げ影響が大きい。(下方修正は)ネガティブな印象と評価する」(SMBC日興証券が2日に配信したリポート)などと、市場で受け止められた。
下方修正を受けて、野村証券のように目標株価を引き下げる(2550円→2300円)動きも出ている。そうしたことが株価下落につながっている。
陸運業界は運転手の残業規制が強化される「2024年問題」をひかえ、24年以降は人手不足感がさらに強まり、会社としてはコストが増大しそうだ。一方で取り扱う荷物の量が増える見込みはない。
それどころか、ヤマトHDはメール便の配達を日本郵政グループに全量委託するなどの対応をとって業務の一部を整理している状況だ。運賃引き上げといった利益確保策に動くかどうかも分からず、当面、株価に下押し圧力がかかりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)