日本製鉄、トヨタと三井物産への訴訟を放棄した裏事情 特許侵害の中国製鋼板使い、製造・販売と主張...裁判は、トヨタ側有利との予想も

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トヨタ側、日鉄の特許無効も主張...係争継続は、脱炭素への協力関係にマイナスとの判断も

   日鉄が請求放棄した背景には、大きく2点があるようだ。

   まず、裁判の推移だ。この種の知的財産を巡る訴訟は企業秘密に関わるだけに、一般の民事訴訟のような口頭弁論が開かれて公開で審理されるとは限らない。

   今回も、当事者と裁判所の水面下での協議を軸に展開。訴えの一部については結審し、24年2月に判決が出ることになっていたというが、賠償額の算定には入っていないことから、トヨタ側有利の判決が出る可能性が指摘されていたという

   とくにトヨタ側は、日鉄の特許の無効も主張。もし「無効」の判決が出たら、中国などのライバル社への牽制が働かなくなる恐れがある。

   実際、今回の提訴後、日本の自動車大手の中には特許訴訟リスクを考え、電磁鋼板の一部を中国製から日本製に切り替えたところもあるといい、特許無効判決だけは避ける必要があったとみられる。

   もうひとつは、脱炭素技術の国際競争が激化しているという業界を取り巻く環境の変化だ。 日鉄は請求放棄の理由として、こうした環境変化で、自動車と鉄鋼の両業界が強固に協力していくことが必要になったと指摘。「係争の継続は日本の産業競争力の強化にとって好ましいものでない」と強調している。

   実際、鉄鋼製品の製造過程での二酸化炭素(CO2)排出削減のうえでも、また、自動車のCO2排出削減に資する鋼材を供給するうえでも、鉄鋼と自動車メーカーの連携は欠かせない。そこで、両業界のトップ企業同士が訴訟を抱えていては、協力の妨げになるということだ。

   和解ではなく訴訟を放棄した判断も、和解の場合は数年かかる可能性があることから、早期の対立解消が必要との判断が働いたようだ。

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